君に惚れ惚れ



「夕っ!帰ろっ」

「琴紀…すまねぇ、今日部活の自主練なんだ!」


彼は顔の前で手を合わせて言う。

今日も自主練かぁ…
そうは思ったけれど、夕がバレーをしている姿は真剣で、かっこいい。
そんなところにも惚れてしまったのだから仕方ない。


「いいよ〜、べつに…気にしないで!じゃあまた明日ね」


そう言って帰ろうとすると肩に掛けられる手。


「夕?」

「練習、見学してかねぇか?」


その提案に私は目を輝かせる。


「いいのっ!?」

「琴紀が見たいんなら俺が先輩にお願いしてやる!!」


いつもは試合でしか見られないバレーが見られるというのだ…
見たいに決まっている。


「見学するっ!」

「おう!」















体育館シューズに履き替え、体育館の中に入ると既に練習は始まっていた。
キュッキュッというシューズの音が小気味よく耳に響く。


繋がれるボールがふわふわと飛び交うコートに感嘆する…
私も授業でバレーをやったことはあるが、あそこまで綺麗にボールを操ることは出来ない。


しかし、そんなボールの繋がりを崩すアタック、
とても早いボールに先程までの面影はなく、空気を切り裂くように進む。

あれを取るの?

そう思ったのも束の間…
ドッ…っという低い音とともにふわっと上がるボール。


すごい。


他のみんなに比べ、身長は大きくないけれど、コートに立つ彼はいつもより何倍もかっこよく見える。



「夕すごい!かっこいい!!」


私が幼い子供の様に言うと、彼は照れた様に頬を赤くしてニッと笑うと


「だろっ」


と返してきた。



その照れ笑いを見て、胸がキュンとする。





あぁ、もう

この気持ちからは抜け出せない。



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