願い事
「おい」
「なに?」
俺が声をかけると、琴紀は顔を上げ、こっちを見てくる。
「…なにって、こっちの台詞だろうが!いきなりなんだよ!?」
いきなりというのは、琴紀の行動だ。
俺が昼飯を食ってたら、こいつが急に現れて、何をするかと思えば目の前に座り込み、俺を拝みはじめた…
全く、理解不能だ。
ちょっとした数学の方程式よりよっぽど難しいぜ。
「何って……龍を崇めてるんだけど」
「そりゃあ見れば分かんだよ!!」
「じゃあ、聞かなければ良いじゃん」
「スマン……じゃなくて!なんで崇めてんだって聞いてんだよ!!」
「なんでって…願い事だよ!叶えてね!!」
「は?ちょっと何言ってるか分かんないんスけど…どうしたんスか?」
「だって…噂が耳に入ったもので!」
「噂ぁ!?」
琴紀が言うには、
俺=お坊さん。つまり、崇めたら良い事があると…
俺に拝むと、願い事が叶うとかいう噂が立ってるらしい
というか、お坊さん拝むってなんか違くね?
べつにお坊さんが願い事叶えてくれる訳じゃないからね?
わかってる??
俺、頭を丸めた訳じゃないし、お坊さんじゃないからね?
「誰が流した…その噂」
「知らなーい」
そう言ってケラケラと笑う琴紀…
「笑うな!馬鹿にしてんのか!?」
「違うって!」
「じゃあなんで拝みに来たんだよ?」
「んー…ちょっとでも可能性があるなら、願い事しようと思って」
琴紀はもう一度、頭を下げると、手をパンパンッと、2回鳴らす。
「ふざけんな…叶うわけゥなっ!?」
「じゃ、願い事!叶えてね!!」
叶うわけない、そう言うのを阻止するようにして俺の顔面にたたき付けられた小さな紙。
「おい琴紀てめぇっ!」
呼び止めようとしたが琴紀は、既に教室からは消えていた。
手に残る小さな紙…
紙と同じく小さな字で書かれた琴紀の願い事。
「バカが、もう叶ってんじゃねぇか」
紙に書かれた願い事…
[龍と両思いになりたい]
もう、とっくに叶ってるんだよバーカ。
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[mokuji]
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