おそろいピアス
「お待たせッス!」
体育館の扉から笑顔で顔を出す涼太。ほんのり汗をかいてて、今日も練習がんばったんだろうな、なんて思って笑みを浮かべる。
「おつかれさま」
そう言ってさっき買っておいた涼太の好きなミネラルウォーターを手渡せば、嬉しそうに礼を言って飲みだす。
「んじゃ、帰ろっか」
自然につないだ手をゆらゆら揺らしながら、いつもの帰り道を歩く。
…プレゼント、いつ渡そう。先週、色んなところを回ってやっと見つけた黄色のピアス。見つけたとき「あ、涼太だ」と思って買った。
どのタイミングで渡そう?分かれるときに渡そうかな。それとも今?いや、でもそれは心の準備が…
「どうかしたんッスか?」
「っ!?う、ぁ…びっくりした」
私の顔を覗き込んだ涼太の端正な顔にドキリと心臓が音を立てる。…思わず見とれてしまった。
「ごめん?で、どうしたんスか?」
「え、とですね…」
え、プレゼントのこと言う?もういっそ、このタイミングで渡そうかな。うん、いいよね?
「こ、れ…!」
ドンと半ば押し付けるように渡す。うぅ、「お誕生日おめでとう」って言いながら渡そうと思ってたのに…!
「コレ、プレゼントッスか?」
「は、はい!」
「なんで敬語なんスか(笑)」
なんて笑いながら箱を開けていく涼太をドキドキしながら見つめる。ピアスをみたら、涼太なんて言うかな。喜んでくれるかな。気に入ってくれたらいいな。逸る気持ちを抑えるように、お揃いで買ったピアスをつけた右耳に触れる。
「うわ!ピアスッス!黄色、オレの髪と同じ色ッスね!ありがと、柚葉っち」
嬉しそうにピアスを目の前に掲げる涼太に笑みがこぼれる。
「ね、涼太。これ見て」
右耳にかかるお揃いのピアスを見せれば、涼太の顔にパァッっと喜びの色が広がって。
次の瞬間、私は涼太の腕の中にいた。
おそろいピアス
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