腹痛の原因
「うーあー」
教室の隅で机に突っ伏す一人の男子生徒。いや、男装生徒。
両手でお腹を抱えてさっきから「うーうー」と呻き声をあげている。
いつもうるさいコイツが呻き声をあげながら自分の席に座りっぱなし。クラスメイト達は気になるようだが、不気味で近づけないようで視線だけをチラチラと向けていた。
「おい」
「んー…?」
声を掛けると、ゆっくりと顔を上げる亜美。いつもはランランと光っている青みがかった瞳には翳がかかっている。
「どうしたのだよ。今日はやけにおとなしいな」
「んー…」
「いつもは鬱陶しいくらいうるさいだろう」
「うるせーやい」
「…重症だな」
いつものコイツなら「うるさい!!」とでも言いながら届きもしない俺の頭を叩こうとするはずなのだよ。
いつもと違いすぎる亜美の様子に俺も少し戸惑う。
「おい、熱はあるのか?」
「なっしんぐ」「ないのか?」「いえーす…」「どこか痛むか?」「おなかー…と頭」「腹痛に頭痛か…風邪でもひいたか?」「ちがう…。もーいーから。しんたろー、go away」「なんでそこだけ流暢なのだよ!」「どーでもいーし。こっちは今痛みに耐えてるんですぅ。あっち行ってクダサーイ」「「保健室に行くか?」「いや、行って治るもんじゃないから」「?原因は分かっているのか?」「わかってるわかってる。大丈夫だから向うへお行きー」「で、何が原因なのだよ?」「ヤベー会話が噛み合わないんですけどどうしよう」
頭を抱え込んだ亜美に声を掛けようとした瞬間に、いきなり背中に何かが圧し掛かる。…どうせ高尾だろう。
「ねー真ちゃん」
予想どうり高尾が肩越しにひょっこりと顔を見せる。そして亜美の腹痛の原因を俺の耳元で小さく囁いた。
―――――――
「おい」
再び亜美に声を掛ける。
「今度は何?」
少し苛立った亜美の声を無視して、亜美の机に缶を置く。
「…おしるこ?」
「あぁ、もちろんあったか〜いの方なのだよ。…今はあまり体を冷やさない方がいいのだろう?」
「は…?」
「おまえもちゃんと女子なんだな」
「なっ!っていうかなんでわた…俺がアレだって知ってる!?」
「高尾に聞いたのだよ」
「高尾ぉぉぉ!!」
勢いよく走り出す亜美に大丈夫なのかと一瞬心配する。まぁ、あれだけ走れるなら大丈夫なのだろう。いつもの調子の亜美に小さく胸をなでおろした。
腹痛の原因(し、真太郎)(戻ってきたのか)(ん、まぁ。…あのー、アレ)(なんなのだよ)(アレだよアレ。…ありがとな)(い、いきなりなんなのだよ!気持ち悪いのだよ!)(失礼だな!)
――――――――――
亜美様から頂いたリクエストで書かせて頂きました。
いかがだったでしょうか?
少しでもご期待に添えれば幸いです。
また、亜美様から頂いた設定でもう一作品書こうと考えております。
他の読者様からのリクエストも随時受け付けております。
リクエストはmail・clapからお願いします。
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