かりもの競争


「よーい…」


パァン!


ピストルの音が鳴って、それと同時に応援の声も大きく響いた。
左足で地面を踏んで、蹴る。
先頭は僕。前にはだれも居らず、お題の紙も選び放題だ。
真ん中にある一枚を掴んで、わらう。

ラッキー、これなら簡単だね。

お題の借り物を手に入れるために、応援席に向かって走り出す。


「柚葉ちゃん!一緒に来てくれない?」

「えっ?わ、わたしですか…?」

僕に声をかけられて肩を揺らして戸惑う柚葉ちゃん。
平助が何か喚いてるけど、そこはスルーだ。

「そ!ホラ、行くよ!」

「ふぁっ…!」

おろおろする柚葉ちゃんの手を取って、応援席から攫う。

「総司ぃっ!」

後ろから聞こえる平助の声にクスリと笑って、スピードを上げる。

「せ、先輩っ!」

「ん?なに?」

「わたし、そんなに速く走れないですっ!」

…確かに。僕とはリーチが違うからなぁ。どうしようかな。


考えた末に僕は最高の答えを弾き出した。

僕って天才かも。



「柚葉ちゃん、ちょっとごめんね?」

「はい…?」


ひょいっ


「せ、せせせ先輩!!?何してるんですか!」

「何って、お姫様抱っこだけど?」

「下ろしてください…!」

「んー、やだ」

悪戯っぽく笑えば、羞恥からか顔を赤くする柚葉ちゃん。
やっぱりこれ名案だね。
速くゴールにたどり着けるうえ、柚葉ちゃんの反応を間近で楽しめる。











結果?もちろん僕が一着だったよ。






かりもの競争



(借り物って何だったんですか…?)

(知りたい?…小動物、だよ)

(しょ、小動物…ですか?)

(うん。まさに君でしょ?)





 

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