繋ぎたい


「じゃ、帰ろっか」

「ん」

いつもと変わらないセリフを言い合って、ゆっくり歩き始める。



じーー



なんか、視線を感じるんだけど…。
隣を見れば、柚葉が俺の手をじっと見つめている。
獲物を狙う猫みたいだなぁ。


すっ


ぱっ


「!?」

俺の左手にのばされた柚葉の右手。
さり気なく避ければ、驚いて右手をもとの位置に戻す。





じーー




ぱっ!



すっ



「っ!!」

もう一度のびてきた柚葉の右手をさっきと同じように避ける。







「むぅ〜〜〜〜」

小さく唸る柚葉。

俺と手を繋ぎたいんだろうなぁ。
毎日やってるけど、繋げたことは一度もない。
まぁ、俺がそう仕向けてるんだけどさ。




ぱっ!!




すっ




「くぅっ…!!」

必死に頑張る柚葉に意地の悪いことをする俺。
俺、結構性格悪いかなぁ。
でも、柚葉が可愛いから、ついついやっちゃうんだよなぁ。

ひとりで惚気つつも、再びやってくる柚葉の手を避ける。



「うぅっ…!!」

挫けかけてる柚葉に、もういいかな。と思って、自分の左手を差し出す。


「っ!?な、なに…?」

さっきから狙ってた俺の手が差し出されたことにびくりとする柚葉。
一瞬のばされかけた手は、見逃してない。


平然を装う柚葉に、ずっとほしかったであろう言葉をかける。


「手、繋ごっか?」

「!?」

「イヤ?」

「イヤじゃない!うれしい!」

パァッっと笑顔を浮かべて俺の左手に自分の右手を重ねる。

「さっきから頑張ってたもんね」

「気づいて…!?」

「可愛かったよ」

「う、い、意地悪っ!」

「ごめんね?」

「ひ、卑怯だ!」

謝りながら、微笑めば頬をほんのり染めて叫ぶ柚葉。
可愛いなぁ。


ぎゅっと強めに握れば、ぎゅぅと握り返される。
左手から伝わる温度に頬を緩めて、夕日に赤く染まる空を見上げた。







繋ぎたい




(明日も繋いで帰ろうね)







 

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