秋の訪れ


「もう秋だねー」

ベンチで腕を前に伸ばしながら、何気なく言葉に出してみた。

「いきなりどうしたの?」

隣の藍はいきなりの私の言葉に怪訝そうな顔を向ける。

「ほら、紅葉はじまってる」

公園をぐるりと囲むように植えられた木々は少しずつ暖かい色へと変わり始めている。
私のさした指をたどって、藍も「そういわれてみればそうだね」と返す。

「でしょ?それにちょっとずつ寒くなってきてるし」

「寒いの?」

「んー、ちょっと肌寒いかな」

少し心配げにこちらを見つめる藍にうれしさを感じる。
顔がだらしない、とか言われそうだから表情には出さないけど。


私の言葉を聞いた藍は少し考える仕草を見せてから、「手、貸しなよ」と言う。
理由はいまいち分からないけど、取り敢えず両手を藍に差し出した。


ぎゅぅ



「…なにしてるの?」

何コレ何コレ!?藍が私の両手をに、握ってる…!!ホントどうしたの!?
珍しすぎる藍の行動に、戸惑う私をよそに、藍は更なる爆弾を投下してきた。

「これであったかくなるんじゃないの?」

「……」

私の手を心配しての行動なの…!?
もう、どこまで私をキュンキュンさせれば気が済むの、この人!!


…っていうか、

「握る力が強すぎて逆に冷たくなっていくんだけど…」

感激が先に来てたけど、次に来てたの痛みだからね、藍!

「ごめん」

すぐさま手を放す藍。
あぁ、そんなに申し訳なさそうな顔しないで。
確かに痛かったけど嬉しかったんだから。



そう言おうとしたけど、






ぎゅぅ





「あ、藍…?」

言葉にする前に、藍の匂いに遮られた。

「あったかい?」

「あったかいっていうか、恥ずかしいっていうか…」

人気がないとはいえ、ここは外。
そんなところで、だ、抱きしめられるとか恥ずかしいに決まってるでしょ…!

嬉しさと恥ずかしさで、顔に熱が集まる。

「?顔が赤い。体温も急に上昇してきた。カゼでもひいた?」

「いや、これは藍のせいなんだけど…」

「ボクのせい?」

「…んーん、何でもない」

「ホントに?」

「うん。…もうちょっとこのままでも良い?」

「寒いの?」

「そういうことにしといて」

赤みが増していく顔を隠すように、藍に強く抱き着いた。








秋の訪れ


(秋の肌寒さ、藍とこうしてられるならアリかも)






 

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