きっかけ
来週のテストに備えての打合せ。
ひと段落したところで切り上げて、帰るといえば四ノ宮君が送ってくれるというので、お言葉に甘えました。
この時の判断が、私に変化をもたらすことになるとは思っていませんでした。
―――――――――
「わざわざ、ありがとうございます」
「いいんですよ〜。僕、柚ちゃんといっぱいおしゃべりしたかったので」
「私と…ですか」
「はいっ」
物好きな人もいるんだなぁ。なんて、隣にいる四ノ宮君を見上げた。
「…ありがとう、ございます」
「ふふっ!僕、柚ちゃんとのペアが決まった時、すっごく嬉しかったんです!」
「そうですか」
何というか…ストレートな言葉を言う人だなぁ。今まで私の周りにいなかったタイプだ。
四ノ宮君とのペア。案外今までと違って楽しめるかもしれない。
「…四ノ宮君、明日曲を渡しますので、少し歌ってくださいますか?少しで構いませんので」
「柚ちゃんが言うなら、い〜っぱい歌っちゃいますね!」
「じゃ、お願いします」
四ノ宮君に返事をもらえたところで、女子寮が見えてきた。
「ここまでで結構です。ありがとうございました」
「ふふっ!はい、おやすみなさい」
ちゅっ
「っ!な、何を…!」
い、いきなり人の頬にキ、キスをするなんて…!一体何考えてるんですか、四ノ宮君は!
悔しくも顔に熱が集まるのを見られまいと、後退って距離をとった私に、四ノ宮君は嬉しそうに笑う。何が楽しいの…!!
「柚ちゃん、赤くて可愛いです〜!」
「か、可愛くないですよ!お、おやすみなさいっ!」
恥ずかしくなって、四ノ宮君の顔がまともに見れないと判断して自室への道を走る。今、人生最速の速さで走ってるんじゃないかな、コレ…!
部屋の扉の前にズルズル座り込んで、膝に顔を埋める。
なんたって彼はあんな行動をしたんですか!?あぁ、もう!!なんですか!免疫のない私への嫌がらせですか!?
――――――その翌日から、私は四ノ宮君を意識しながら学校生活を送ることになったのです。
「…とまぁ、これが始まりですかね」
「へぇ〜!2人が付き合ってるの、那月からのキスがきっかけだったんだ」
「そうですよ。あの時ほど驚いたことはありません」
「だって柚ちゃんが可愛くて!思わずしちゃったんですよ〜!!柚波ちゃん大好きです、ぎゅ〜!」
「ちょっと強いです、那月君」
そんな事を言いながらも柚葉の顔は嬉しそうだったというのは音也の後日談。
end.
ヒロインの回想だったというオチ。
ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
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