先生と私
SSL
黒板に次々現れる文字をノートに写しながら、目の前に立つ赤髪の教師を見つめる。今日もイケメンですね、先生。整った顔立ちに、落ち着いた大人の雰囲気。チョークを持つ男性らしい大き目の手。
もはや、ノートなんてとってない。目の前に原田先生がいる限り、私が授業に集中することなんてできない。いや、集中しろ私!…言い聞かせても目は先生を追ってしまう。
「っ!」
うわぁぁぁ!!目が合った!そんなにかっこよく微笑まないで下さいよぉ!
この授業は諦めよう。諦めて、とりあえず心を落ち着かせよう。…ふぅ。
「プリント配るが、捨てんじゃねーぞ」
先生から手渡されたプリントを後ろの席に回してから、前に向き直る。あれ?何、このメモ。
"7時にいつもの場所で"
原田先生から…!7時ってことは、一緒に夕食ってことだよね!?やったぁ!
―――――――――――――
大人っぽい服、大人っぽい化粧。
少し背伸びした、いつもと違う私。
鏡の前で最終チェック。うん、これなら先生の隣にいても違和感ないかな。
時計を見て、慌ててカバンを手に家を飛び出す。
≪At いつもの場所≫
「原田先生っ!」
「よぉ」
「ま、待たせちゃってすみません!」
「そんなに待ってねぇから気にすんな」
微笑んで手を私に差し出す。その仕草があまりにも様になっていて、見惚れてしまう。
「どうした?」
「い、いえっ!なんでもありません!」
慌てて先生の手を取って、二人で歩き出す。
「…綺麗だ」
「へ?」
「綺麗だ、柚葉」
「せっ先生!いきなりどうしたんですか!?」
「先生じゃなくて左之助って呼べよ」
「あ、はい!すみませ…じゃなくて…!!」
「柚葉、綺麗だ。」
腰に手が回り、抱き寄せられる。再び耳元で囁かれて、顔に熱が集まる。
「あ、ありがとうございます」
絞り出した声は情けなくも震えて小さいけど、伝わっただろうか。
「あぁ」
ふわりと頭を撫でられる。あぁ、ちゃんと伝わったんだ。
赤くなった顔を隠すようにせんせ…左之助さんの胸板に顔をうずめた。
end
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