ちんけとは沈淪剣闘士のことです



「今日あんた誕生日だっけ」
「えっ？　ああ……、そういえばそうだね。すっかり忘れてた」
「ふーん」
「何？　祝ってくれるの？」
「まあ誕生日だし……」
「へえ、俺のために生誕の日を祝ってくれるんだ。嬉しいな」
「何か欲しいものとかないの、したいこととか」
「うーん……実は前から考えてたんだけど」
「はあ？　自分の誕生日覚えてるじゃん」
「違うよ。なまえから欲しいものとか、なまえとしたいこととか、色々考えてたってこと」
「ふーん、それで？」
「特にないかな」
「えっ」
「なんでそんなに驚くの？」
「ないの？」
「ないけど」
「えっ……」
「何？　そんなに意外？」
「本当にないの？」
「だからそうだって。別に俺は今のままで……まあ……満足してるし。無理強いするものでもないしね」
「……」
「どうしたの？」
「……なんか……」
「うん？」
「いやらしいことしようとか……」
「……」
「言うと……思ってた……」
「…………なまえがしたいってこと？」
「違う、なんでそうなるの。最低」
「誕生日に欲しいもの聞いておいて、ある程度予想はしてたんだ？」
「してない、アヤックスならそう言うかもって今思ったの」
「俺のこと考えてくれてたんだ」
「……ちょっとはそうだけど、悪い！？」
「ううん、すごく嬉しい！」
「最近たくさん仕事もらってるからモラもあまってるの。あんまり高いものは無理だと思うけど、欲しいもの一つくらいなら言ってくれれば用意できるよ」
「俺の誕生日に向けてモラ集めてたの！？」
「違う！！　なんでそうなるの！？」
「いやだってそれはそういうふうにしか聞こえないだろ」
「誕生日祝うのなんか当たり前でしょ！？　なんで当たり前のことをそんなに特別視しようとするの？　意味わかんない」
「当たり前じゃないからだよ、なまえが俺の誕生日を祝ってくれたことなんか一度もないだろ！」
「……たしかに」
「だから俺は今すごく嬉しいんだよ！　どうしよう、そんなにすぐ欲しいものなんか出てこないよ、えっ、何にしよう！？」
「別に今決めなくてもいいでしょ」
「今決めなくていいの！？」
「はあ！？」
「今決めないと一生あげないとか言われるのかと思った！」
「あんたテンションおかしすぎ、誕生日だからって調子乗んないで！」
「いやなまえに祝われてるんだからこうもなるだろ！　ええっ、何にしようかな！？」