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(会話文)(一部メタっぽいコマンドカードバトル描写があります)(一部、性的な言葉を含んでいる話があります)


「……なまえさん?」
「はい?」
「そちらのお召し物は?」
「これですか!? いいでしょう! アーツのコマンドカードのパーカーです! じゃーん! ダ・ヴィンチちゃんが配っていたので、貰ったんです」
「……」
「色は青いんですけど、あったかくていい感じですよ!」
「……赤色は。バスターのコマンドカードは、お嫌いですか?」
「はい?」
「いえ……その、これは私の勝手な見解ですが。なまえさんには青よりも赤のほうが、より似合うのではないかと」
「そうですか? 青い服、わりと好きなんですけどね〜」
「しかし……」
「アーツチェインごっこもできますし」
「アーツチェインごっこ」
「NPもすぐに溜まりますよ、いっぱい宝具が撃てますよ!」
「そういう問題ではないのです!」
「ど、どういう問題ですか」
「良いですか。バスター、アーツ、クイック、この中で最も攻撃力の高いコマンドカードは?」
「バスターです?」
「如何にも! 一枚目に選択すれば後続のカードの攻撃力も上昇します。私のバスターブレイブチェインによる総ダメージ量は伊達ではありません」
「でも、バスターカードばかり選んでいたら、NPも溜まらないので宝具が撃てなくなってしまうのでは……」
「宝具を使用するしないに関係なく、先に敵を倒してしまえば良いのです。簡単でしょう?」
「ええ〜〜っそんな脳筋な……でもわたしマスターじゃないので、コマンドカードバトルというのもイマイチ理解できていないというか……」
「貴女が私のマスターになった暁には、この日輪の剣による宝具込みバスターブレイブチェインでの最大火力を間近でご覧に、入れ、ま……しょう……」
「……わたしがガウェインさんのマスターに?」
「……いえ、忘れてください。口が滑りました。一時の契約とは云え、今際の主であるリツカに対しあまりにも配慮のない発言でした。どうかご容赦を」
「わたしはガウェインさんのマスターには成れませんよう。マスター適正もないし……そもそもマスターの器でもないですし、ここで出来ることと云えば機材のメンテナンスくらいのものです。戦場に出たところで、指示も何もできなくて困らせてしまうのがオチですよ」
「しかし、コマンドカードや采配の手順などはよくご存じのようですね」
「ああ、それは……その……あの、マスターさんには内緒ですよ」
「はい?」
「マスターさんの真似をですね……その、するのが趣味というか……」
「……マスターに、憧れを?」
「な、内緒ですよ!」
「そうですか、なるほど、そうですか! ああ、なんと喜ばしい!」
「やっぱりかっこいいですし、特異点での活躍もさることながら、戦闘シミュレーション中のマスターさんなんかを見てしまうと、かっこいいなぁって……」
「それなら話が早い。戦闘シミュレーションでしたら、そうですね。出来れば日差しのあるフィールドが良い。今から特訓ということでしたら、丸一日このガウェインがお供いたしましょう。いえ、今日だけとは言わず、明日でも明後日でも、都合のつく限りお付き合いいたします」
「……はい?」
「私の特異体質、“聖者の数字”。その威力をご覧にいれましょう」
「昼間だけ力が三倍になるっていう、あの?」
「はい。なまえさんが一人前の魔術師になれますよう、誠意を込めて指導させていただきたく。一に特訓、二に特訓。さあ、参りましょうか」
「ん? ん? 待ってください、わたしはマスターさんに憧れてはいますが、マスターになりたいというわけじゃ……」
「やはりアーツでは心もとない。バスターです。バスターを指示し続けてください。貴女に完全な勝利があらんことを」
「あの! 人の話聞いてください!」



「なまえさん! なりません! 貴女のような可憐な女性がそのような重労働など! 荷物運びでしたら私にお任せください!」
「これは軽いから大丈夫ですよ〜あと可憐じゃないので大丈夫です」
「すぐこちらに! 怪我などしてしまってからでは遅いのです!」
「大丈夫ですってば!」
「貴女はこの前もそう言ってダンボールのフチで手のひらを切った!」
「その時だけですよ!」
「いいえ! さらにその前も! 無理をして重いものを運んで、モノを置いた際に小指を挟んで盛大な内出血をさせていましたね!?」
「ヒエーッ! どうしてそんなことまで! 誰にも言ってなかったのに!」
「大変失礼ながら娯楽室の簡易キッチンで絆創膏を貼り替えているのを見てしまいまして、ああ、もう! そんなことはどうでもいい! 早くそれをこちらに渡しなさい!」
「こ、これは、ダメですよ!」
「何故!?」
「ダメ、ダメなんですよ! それに、見た目通りめちゃくちゃ軽いので大丈夫なんですよ! 本当ですよ!」
「……そうですか。軽いものなのでしたら安心ですね」
「そう! 安心なんです!」
「しかし油断は禁物です。なまえさんのことですから、足を縺れさせて転倒しないとも限りません。その段ボール箱を渡さないのでしたら、貴女ごと運ばせていただきます」
「ハアーッ!?」
「して、どちらまで向かわれますか? このガウェインが責任を持ってお運びしましょう」
「……お、教えませーん! なので運ばれる必要もありません!」
「全く、強情な……! ぬんっ!」


「(運ばれてしまった……私ごと……)」
「……あの」
「はい」
「行き先はこちらで合っていますか?」
「さ、さあ?」
「……なまえさん」
「はい」
「思っていたよりも、遥かに軽いのですが」
「ガウェインさんが力持ちすぎるからじゃないでしょうか、それに、軽いものしか入っていないので……」
「貴女は! 普段から一体何を食べているんですか!?」
「普段からは食べてないですよ!!」
「普段から食べていない!? どういうことですか!?」
「麩菓子なんて普段からこんなに食べられるわけないでしょう!!」
「…………ふがし?」
「…………ふがし」
「麩菓子を運んでいたのですか?」
「そうです」
「……失礼にあたるとは思うのですが、理由をお伺いしても?」
「…………食べるためですけど……」
「……なるほど。と、いうことは、行く先は」
「私の部屋です……」

「人とすれ違いそうになったらすぐ降ろしていただいてもいいですか、というかお姫様抱っことかすごく恥ずかしいのですぐにでも降ろしてほしいのですが」
「そうですね。すれ違った人物によって降ろすかどうかを決めます」
「わたしの意志は!?」
「落下事故を防ぐためにも、大人しくしていてくださいね」
「ヒエーッ」

「そういえば……何故、箱の中身を隠そうとしたのですか?」
「いや……その……駄菓子なので、こんなものが好きとか子供みたいで恥ずかしいなと思いまして、ほら、麩菓子って恵方巻みたいじゃないですか、だから恵方巻の代わりに食べようとか……」
「……」
「思っていたんですけど、節分を過ぎてしまって……食べるタイミングもなくて、でもやっぱり食べたいなーと、それで隠していた貯蔵庫から……うぅわっ」
「……なまえさんの部屋の前に到着です。降ろしますね」
「あ、ありがとうございます……よいしょ。ここまで運んでくださったお礼……になれば幸いですが……一本どうぞ……! あ! 誰にも言わないでくださいね! 約束ですよ! バレンタインにはちゃんとしたものを渡しますから! ……あの! 聞いてます!?」



 貴女の恥辱に濡れた顔が見たいのだ。
 そう伝えたら、彼女はどんな表情で私を見てくれるのだろう。溝を見下ろすような蔑みの目を向けてくれるのか、はたまた頬を桃色に染めて俯くだけに終わるのか。
 私はどちらでも構わない。貴女の涙に濡れたまかぶらを拭えるのならば。上気した頬を指の背で撫でられるのならば。露の垂れる口元に、この唇を寄せることを許されるのならば。
 この望みが、例え私の頭の中だけで叶うものであったとしても、私は一向に構わない。
 無邪気な笑顔を向ける貴女を快楽に染め上げて抱き潰したいと思っている訳ではないのだ。いや、一度は想像した。内壁のうねる膣中に我が精を注ぎ込み、失神する寸前まで膣奥を突き上げ続ける、そんな想像で自身を慰めていたこともあった。しかし、それも一夜限りのこと。
 それが実現することで、私の目の前から貴女の笑顔が消えるくらいならば。
 このままでいい。現状維持で構わない。
 まだ、私は貴女と。ティーセット越しにでも談笑をしていたい。くだらない話に小さな花を咲かせる、その程度のものでいい。
「ガウェインさんの手、大きいですね! 触ってもいいですか?」
「……はい、どうぞ」
 今は、まだ。

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