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「なまえさん、これ」
「……ポケモンのタマゴ?」
「そう。ヌメラのタマゴ」
「なんで? わたしもうドラゴンタイプのポケモン持ってるから、大丈夫だよ。ほら、随分前にナックラーもらったでしょ、もうフライゴンになったし……」
「や、もし時間あったら、孵化直前くらいまで手伝ってほしいんだ。ドラゴンタイプのタマゴだから孵化にすごい時間かかってさ。オレ今週超激務だから、あんまり構ってやれそうになくて」
「……わたしもちょっと忙しいかな」
「あ、ゴメン! オレもう行かなきゃ。ときどきでいいから一緒に歩いてやってほしい! 今度ランチ奢るから!」
「や、大丈夫……」
「じゃ、また来るからな〜」
「えっ、あっ、…………」


「ドラゴンタイプのタマゴって結構構ってあげないといけないんだよね……どれくらいだっけ……」

「もう少し手伝ってあげたほうがいいかな、少し一緒に居たら孵化するくらい……」

「キバナくん、来ないな……そろそろ孵化しちゃうかも……」

「『キバナくん、タマゴいつ迎えに来れそうですか? そろそろ生まれちゃうかも』」

「『キバナくん。ごめんなさい。ヌメラ生まれちゃった』」


「なまえさん、ヌメラ生まれちゃったか!? ごめん! なかなか迎えに来れなくて」
「ぬめ〜」
「ごめんなさい、キバナくんのヌメラ、孵化しちゃった……」
「あ〜、これはもう完全になまえさんのことを親だと思ってる感じだな」
「ぬめ〜」
「結構お世話しなきゃと思って、たくさん構っちゃった、そしたら生まれちゃって……ごめんね……」
「そんなにオレのために……!」
「頼まれたから……」
「ぬめ〜」
「これはもう、アレだな。なまえさんのヌメラだな〜」
「ぬめ〜」
「えっ」
「オレはまた別のタマゴ孵化させるからさ、このヌメラはなまえさんの子ってことで」
「えっ」
「オレのために手伝ってくれてありがとう、嬉しいな〜! 今度ランチ奢るから」
「いや、大丈夫……あの、わたしもうこれ以上ポケモン……」
「近いうちになまえさんの家にポケモンフーズとかいろいろ送るからな! なんならヌメラのID登録とか申請類、オレが全部代理でやっとくよ」
「えっ、別にいいよ……申し訳ないし……」
「元はオレが無理言って頼んだものだし、結果的になまえさんのこと困らせてるしな、支援はするぜ! オレ、なまえさんの彼氏だし」
「別に大丈夫だよ」
「じゃあオレそろそろ戻る! またな〜なまえさん、ヌメラもまたな〜」
「ぬめ〜」
「……」


「なんだか最近だるいな……」
「ぬめ〜っ」
「なんだろう、季節の変わり目だからかな」
「ぬめ〜」
「心配かけてごめんね、大丈夫だよ。ジャラランガ、フライゴン、ヌメラ、ごはんだよー」
「じゃらら〜」
「ふら〜」
「ぬめ〜!」


「頭痛がする……」
「ぬめ〜……」
「気圧が下がってるのかな。今日は早めに寝よう」
「ぬめ〜」
「みんな、お布団に入ってねー」
「じゃらら〜」
「ふら〜」
「ぬめ〜」


「熱が下がらない……」
「ぬめ〜?」
「うう……」
「ぬめ〜……」
「…………」
「じゃ!?」
「ふら〜!?」
「ぬ、ぬめ〜!?」


「なまえさん! なまえさん!」
「……、……キバナくん?」
「う、うおお、よかった、なまえさん、死んじゃうかと思っ……、おおお……」
「じゃら〜!」
「ふら〜!」
「えっ、なんでわたし……なんで点滴……えっ、風邪こじらせて入院……!? バカ……!?」
「なまえさん、もしかしてP系混合ワクチンの予防接種受けてなかったりするか?」
「…………わかんない」
「ヌメラの粘液の雑菌が悪さしたんだよ。なんですぐ病院行かなかったんだ?」
「風邪だと思って……」
「なまえさんが予防接種受けてないの知らずにヌメラあげちまった、ごめん、なまえさん、オレのせいだ……」
「……だから今ここにヌメラがいないの?」
「ヌメラは今ボールの中でおとなしくしてるぜ」
「そっか……」
「継続して薬飲んで、予防接種何回か受ければ大丈夫って先生は言ってた。あとからまた説明してもらえると思う。別にヌメラを隔離しないといけないわけじゃないってさ」
「うん、わかった」
「はー、なまえさん、大事に至らなくて良かった、大丈夫か? オレ売店行ってくるけど、何かほしいものあるか?」
「ううん」
「そっか、じゃあなまえさんが好きそうなの何か買ってくるよ」
「キバナくん、今日は忙しくないの?」
「今日はオフ」
「そっか……」
「これナースコールだからな、ここにスマホ置いてある。これ雑誌、48ページにオレが載ってる。これ一応着替え。あっ、これはあれだ、なまえさんの実家のお母さんが用意してくれたやつだからな、オレが取ってきたんじゃないからな!」
「えっ、お母さんと会ったの!?」
「ウン!」
「終わった…………」


「ぬ¨め¨〜!」
「あーヌメラ、ダメ、こっち来ちゃダメ」
「ヌ¨!? ヌ¨ア¨〜!!」
「触るのはまだダメなんだって」
「ヌ¨エ¨〜!!」
「微熱収まって三日くらいしたら、触ってもいいみたい。もう少しだけガマンしてね、ごめんね」
「ア¨〜!!」
「う〜ん、なまえさんのヌメラはれいせいの筈なんだけどな……さみしがりっぽいな……ヌメルゴンに石持たせ忘れたか?」
「あの、キバナくん、暫くヌメラのこと預かっててほしい……だめかな?」
「オレは問題ないよ」
「ヌ¨ア¨〜!! ア¨〜!!」
「なんでヌメラこんなに鳴くの……」
「なまえさんから離れるのがイヤなのか? ……オレがなまえさんの家に泊まって面倒みるとか……」
「よく考えたらキバナくん忙しいよね」
「えっ、いやオレは別に」
「ちょっと実家に連絡するね。もしダメだったらキバナくん預かって欲し……あっ、OK出た。実家に預けることにします」
「あ、ハイ……」
「入院するなんて思ってなかったな。キバナくんに迷惑かけちゃった。ごめんね。ありがとう」
「オレは別に迷惑だと思ってないし、なまえさんが倒れたときオレのこと呼んでくれたのはなまえさんのフライゴンだぜ」
「そうなの?」
「ふら〜」
「フライゴンに感謝だな〜。オレに真っ先に教えに来てくれてありがとな」
「ふら〜」
「次何かあったらまず実家に……」
「いやオレで良くない?」

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