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#ポケモン養護施設ねがいのいえ…様々な理由で、トレーナーとポケモンバトルや生活を続けていくことが困難だったり、一匹の力では生きていけなくなったポケモンたちが利用する入所施設です。
#基本的にポケモンと夢主はお話しできません
#Twitterのまとめ



 彼女のマホイップは少しだけ溶けている。クリームを作る細胞が通常の個体より少ないため身体の形状がうまく固定出来ないのだと云う。また、クリーム生成器官が未発達らしく、一度に分泌出来るクリームの総量も極端に少ない。けれども、彼女のマホイップから垂れるクリームの味は本当に格別なのだ。
 彼女の膝の上で、マホイップは幸せそうにその身を崩しながら眠っている。時折垂れすぎたクリームを、彼女は片手で掬ってマホイップの身体に塗り直している。過去に、古いクリームを塗り直すのはやめたほうがいいと彼女に忠告したのだが、そう言った瞬間マホイップがオレを攻撃し始めたので、あのマホイップにとっては、とても大切な工程なのだろう。オレはなまえの手がミルキィバニラのクリームでべたべたになっていくのを見て、そっと布巾を渡そうとしたのだが、異常に掃除好きのチラーミィに先に奪われてしまった。





 彼女のマホイップは「とける」が使えない。あれ以上溶けると高確率で元の形状には戻れなくなるからだ。ただ、ポケモンバトルをしたところで、相手ポケモンから攻撃を食らえば例えどのような火力の低い技でも致命傷と成り得るだろう。一度彼女のマホイップが野生のポケモンに襲われダメージを負った姿を見たことがある。あれは、本当に酷いものだった。いちご型のアメざいくは地面へとこぼれ落ち、頭部の一部がとれかけ、周囲にミルキィバニラの甘い匂いが漂い、ほとんど液状となったクリームが散乱していた。彼女は瀕死の状態のマホイップを抱きかかえポケモンセンターのある方角へと駆けた。
 心配になりオレも同行したのだが、彼女の足に追いついたとき、ふとその細腕の中で崩れかけているマホイップの顔を見てしまった。オレはそのとき見たマホイップの表情を忘れることはないだろう。そのマホイップは、彼女の腕の中で、幸せそうに笑っていた。
 そしてオレの視線に気がつくと、にい、と口元にだけ笑みを浮かべ、彼女の胸に縋り付いたのだ。何かの間違いかもしれない。そう見えたというだけの、錯覚だったのかもしれない。





「あたし弱くてかわいいからなまえに愛されてるの 孤高のダンデ 無敵のダンデ あなたは強くてかっこいいからなまえには愛されない かわいそう! チャレンジャーには強いのに ポケモンに負けちゃうなんて!」
「煽るなよ、弱く見えるぞ」
「あたしはもとから よわいからいいの」
「む……」
「ダンデさんマホイップとお話できるんですか!?」
「いや……なんとなくわかるだけだ」
「なまえー なでてー」
「なまえくん、脚がベチャベチャだ」
「いえ……お気になさらず」
「なでてー」
「あんまり構うとマホイップにもよくないので」
「なでてー」
「まるで気にしていないな」





「あたしかわいいからなまえにあいされるしあたしよわいからなまえに守ってもらえるの 」
「ぐ…」
「あたしなまえがいないとなにもできないしなまえと離れたくないしきらわれたくない、なまえがすき…」
「わかる」
「は?きも」
「オレは可愛くないし弱くもない…童顔であることは歳をとるにつれ逆にデメリットになるしオレはガラルのチャンピオン、弱い訳がない…! 一体どうすれば」
「うざ」





「お薬の時間だよ、凝固剤飲もうね」
「いや! 飲みたくない〜」
「飲んでよ〜」
「いや〜ん〜」
「ダンデさん呼ぶよ」
「…………」
「えらいね〜」
「あいさつ回り以外で来られたらたまったもんじゃないし」
「なにー?」
「なんでもないの〜」





「なまえ〜なでて〜」
「(撫でて欲しいのかな…)」
「ぐちゃぐちゃになってもいいからなでて〜!」
「形が崩れちゃうからそ〜っと…」
「もっと〜〜!!うわ〜〜ん」
「あっ崩れちゃっ ごめんね!」
「ち¨がう¨〜〜〜」





「マホイップ! 撫でて欲しいんだな!」
「は? ちがう! なまえに撫でて欲しいの! はなせ! クッサ!」
「傷つくぞ!」
「ダンデさんに抱っこしてもらえてよかったね」
「は?」





 あたしはおいしいけどあなたは美味しくない。あたしはかわいいけどあなたは可愛くない。あたしはよわいけどあなたはとても強い。あたしはあいされるけどあなたは愛されない。あたしはあの子をまもれないけどあなたはあの子を守ってね。

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