SSS | ナノ


「そらとぶタクシーをご利用頂きありがとうございます! 本日はどちらまで?」
「あ、あの、使うの初めてで……」
「あ! それでしたらまず初めにご説明させていただきます。当サービスはジムチャレンジャー及びポケモントレーナーの方は期間中無料でご利用いただけます。リーグカード、またはポケモン捕獲免許はお持ちでしょうか?」
「はい、」
「ありがとうございます。確認いたしました。ユウリさまはジムチャレンジの期間中は当サービスを無料でご利用いただけます。注意事項といたしましては、ジムチャレンジャー及びポケモントレーナーの方は、当人が一度行ったことのある地域までしか移動することができません。また、当サービスが指定したポイントにしか着陸出来ませんのでご注意ください。飛行中は絶対にシートベルトを外さないでください」
「はい」
「説明は以上になります。……どちらに向かいますか?」
「ハシノマ原っぱに……」
「畏まりました。移動中はどう過ごされますか?」
「……、」
「?」
「お、おはなし……したいです」


「え〜! あのチャンピオンからポケモンを! 確かにこのへんじゃあんまり見ないポケモンだな〜とは思ってました」
「えへへ……」
「あ、ポケモンが乗り出すと危ないので、一緒に乗るときはちゃんと見ていてあげてくださいね」
「はい!」
「たまになんですけど、落ちそうになったポケモンを追いかけてお客さんも落ちそうになることがあるので……」
「え!」
「私は基本的にゴンドラのほうは見えないので、インカムからの音声頼りになってしまって……」
「そ、そうですよね。大変なんですね。気を付けます……」
「あ、そんなに固くならなくても! あ、ほら、あの巣穴から紫の光が出てます! もしかしたらキョダイマックスポケモンがいるのかも……やっぱり挑戦しにいくんですか?」
「はい! 今日はそのために……」
「そうなんですね〜! がんばってくださいね! はい、そろそろ到着です。着陸しますのでお気を付けください〜」
「……、」


「ご利用ありがとうございました〜」
「ありがとうございました……」
「……はい、これ差し入れです。ねがいのかたまり」
「え! い、いいんですか?」
「わたしより必要としている人のもとに渡ったほうが良いと思うので……」
「あ、ありがとうございます……!」
「またご利用ください〜」
「……!」


「こんにちはー、今日はどこまで?」
「(あの人じゃない……)ナックルシティまで……」
「了解〜。ナックルシティまで何しにいくんすか〜?」
「……ボールを買いに」


「こんばんは〜! 今日はどこまでいかれますか〜?」
「(違う……)エンジンシティまで……」
「は〜い、今日は雪だから屋根と窓つけますね〜。気を付けてくださいね〜」
「……はい……」

「(あの人の運転が、一番よかったな……)」


「やっぱり、毎回同じドライバーさんのタクシーに乗せてもらうのって難しいんですかね……」
「なんでそのドライバーが良いんだ?」
「……! う、うんてんうまかったし……声が……落ち着くので……」
「へー、ドライバーの名前聞いたか?」
「いえ……」
「特徴は?」
「えっと……こんな……こんなかんじの……」
「……この人か?」
「!! な、なんでキバナさんが……」
「この前連絡先交換した」
「は?」
「この前タクシー使ったときヌメラに持たせてたアイテム外に落としちまって、見つかったら連絡くれるらしいからそれで交換したって感じだな」
「キバナさん手持ちにフライゴンいませんでしたっけ」
「領空権があるからなー、基本的にチャンピオンと非常時以外は空飛べないんだよ」
「この前飛んでましたよね?」
「ワイルドエリアはなー、そのへん厳しいからなー」
「ふーん…………何落としたんですか?」
「しんかのきせき」
「へー……」
「信じてないって顔だな」
「いや……」
「まあまあ、なまえの連絡先欲しくないのか?」
「ほ、ほしい……(なまえっていうんだ……)」
「自分で聞きな。俺は聞いたし」
「は?」
「ここでオレさまが情報渡したらモラルもなんもねえ最低最悪野郎になっちまうだろうが」
「……?」
「なんだその顔、オレさまこのあとシュートシティに用があるからなまえさん呼ぶかな」
「は?」


「あ、もしもしー、なまえさん? オレさまシュートシティに」
『す、すみません! まだ落とされたスカーフのほう見つかっていなくて……』
「あ〜それはいいからさ、一台頼めないか?」
『本当にすみません……』
「スカーフ?」
「あ〜〜」
「落としたのはしんかのきせきでは?」
『申し訳ございません、わたしこれから出てしまうので、別のものを向かわせます』
「ん? あ〜そうなのか。結構急いでるから、今回はやっぱいいかな。じゃあな! スカーフ見つけたら教えてくれ」
『大変申し訳ございません……!』
「…………」
「その目はなんだユウリ」
「スカーフ落としたのウソなんですか?」
「いや、オレさまはスカーフを落としたぜ。こだわってるからな」
「でもさっきしんかのきせきって」
「気のせいだろ」


「……、あの、そらとぶタクシーですか? なまえさんって人に繋いでもらえませんか? その……彼女の落とし物を拾って……はい……はい、ありがとうございます。あ、あと、タクシー、利用したいです」


「そらとぶタクシーをご利用頂きありがとうございます! あの、落とし物って……」
「これなんですけど、」
「え! こだわりスカーフ!」
「ワイルドエリアで探索中に、見つけたんです。もしかしたらキバナさんの落とし物かなと思って……」
「……! お、お客様が見つけてくださったんですか!? お手を煩わせてしまい大変申し訳ございません!」
「で、その、今キバナさんナックルシティでご飯食べてるそうなので、これから一緒にいきませんか? と思って……」
「そんな、本当にありがとうございます、」
「あの」
「はい」
「わたし、ユウリって言います、ユウリ」
「ユウリさま」
「ユウリでいいです。私からキバナさんに確認とっても良かったんですけど、なまえさんからキバナさんに直接渡したほうがいいかなって思って……」
「ほ、ほんとうにすみません……! では、お預かりいたします……!」
「……えへへ、ナックルシティまで、よろしくお願いします」
「はい!」


「なんとお礼をすれば良いか……」
「いいです、大丈夫です。スカーフ……結構貴重なものだから、かなり探したと思うんですけど」
「ですよね、やっぱり貴重なものですよね……ワイルドエリアは結構広いし、どうしても見つからなくて……」
「木に引っかかっていたので、きのみ欲しさに木を揺らしたらちょうど落ちてきたんです。だから、もしかしたらこれ、キバナさんが言ってた落とし物かな……って」
「ううう、本当にありがとうございます、私の不注意で……」
「いえ、キバナさんの不注意だと思いますよ。見つかってよかったです」


「ごちそーさま〜。お、ユウリ。お、なまえさん!?」
「お世話になっております。そらとぶタクシー、ドライバーのなまえです。本日はお客様の落とし物であるこだわりスカーフのほうが見つかりまして、ご確認いただきたく……」
「……あー……?」
「こちらでお間違いないですか?」
「……、あー、うん。これ、だな。間違いない」
「良かった……! ユウリちゃんが見つけてくださって、わざわざ私のところに届けてくださいまして……」
「……は? …………ふーん?」
「…………見つかって良かったですね、キバナさん?」
「おー、そうだな。良かった良かった」
「それでは、わたしはこちらで失礼いたします、是非またご利用くださいね!」


「で、なんでウソついたんですか?」
「ヌメラにスカーフ巻くなんざおかしいってユウリならわかるだろ」
「そうですね。しんかのきせきって答えたのは正解だったと思います。わざわざスカーフを落としたのはなまえさんの良心を利用して探させて見つかったらご飯にでも誘うつもりだったんでしょ!」
「んー、ちょっと違うな」
「……?」
「オレさまスカーフなんざ落としてない」
「…………サイテー」
「ユウリだってこのスカーフ、バトルタワーで交換してきたんだろ?」
「……キバナさんが困ってると思って」
「んー、それなら俺に直接しんかのきせき渡してタクシ―会社に落とし物見つかったって連絡すればいいだけだからな。最初からオレさまを疑ってたな? よくやるぜ」
「……なまえさんに言いますよ」
「いやそれは勘弁してくれねえか? なんだ、なまえの連絡先が欲しいのか?」
「いえ、自分で聞いたので」
「やるじゃん」
「じゃ、私巣穴巡り行くので。さよなら!」
「………………おっかねー」

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -