「どうしてモフモフ族のみんながここに来たんだ!来ちゃダメだって言っただろ?!」



普段の飄々とした姿などどこにもなく、助けるなりキュッポ達に怒鳴りつけたジェイに、それでもキュッポ達は目を逸らさずに真っ直ぐにジェイを見つめていた。
動揺しているのが露骨に現れたのか、肩で息すらもしているジェイの側にクロエ達が駆けつければ、モフモフ族の視線が一気に集まり、思わず一歩引きそうになってしまう(誰が逃げ腰になったかは、言わないでおくが)。
眉間に皺を寄せ、慈しむのではなく怪訝そうに見るジェイに、それでもキュッポ達は言った。
言うことを、止めなかった。



「ジェイ!キュッポ達も一緒に戦うキュ!!」
「遺跡船はピッポ達にとっても大切な家だキュ!これ以上好き勝手にはさせないキュ!」
「セネルさん達を助けるキュ!」



ジェーイ、ジェーイ、ジェーイ、と続くモフモフ族の訴えに、ジェイは目を見張って一度呆然と立ち尽くしてしまったが、すぐに首を横に振ってまず態度からダメだと示した。
ジェイ!と叫ぶモフモフ族の言葉に、首を横に振るしか、ない。
「これはジェー坊の負けじゃのぉ」と言うモーゼスの言葉にも、モフモフ族の想いも、ジェイは理解出来ないわけではなかったが、だからと言って認められる筈がなかった。


傷付いて欲しくなんか、なかったから。
モフモフ族のみんなが傷付くなんて、絶対に嫌だった。

それはエゴでしかないことも、ジェイは知っている。
そしてまたここで無理矢理下げても、納得がいかなければみんなが勝手に飛び出してしまうのも、知っていた。
なら、ば。



「…やっぱり、モフモフ族のみんなの参加を認めることは出来ません」
「ジェイ!」
「だから、代わりに僕がウィルさん達と一緒に行きます。足を引っ張らないことはお約束しますよ。キュッポ達は本部で支援して欲しい」



苦肉の策だったのだろう。
告げた瞬間、目を輝かせたモフモフ族達とは違い、ジェイは些か諦めた風にも思えたが、ウィル達も拒むことなどせず、新たな頼もしい戦力…爪術士の加入に再び駆け出すことにした。
艦橋まではまだ距離がある分、そう長い間こうして立ち止まっているわけにもいかない。
走りながらも状況を説明するジェイにクロエとノーマは苦く笑いつつも、思っていたよりも数の多いヴァーツラフ軍にこれは少し不味いかと顔をしかめた、その時だった。



「あれは…!」



思わず立ち止まってしまったのはウィルだけの話ではなく、ジェイやワルターまでも足を止めて目を見張っていた。
すぐに不快なものを聞いたとばかりに顔をしかめたジェイとワルターに、気付いたシャーリィは困ったように笑うしかないが、確かに聞こえる声は、雄叫びは、今この時にあっては頼もしいばかりだろう。
艦橋前へと挑んで行くその姿に、モーゼスが一度だけ駆け寄ろうとしたけれど、すぐにやめた。
情けないことに、肩が震えてしまう。
どうして、こんなにも。



「アニキ達の為に道を開け!」
「おいら達で何とかするんだ!!ここは絶対に食い止めろ!」



傷だらけだろうに、それでも懸命に戦う山賊達の姿を前に、モーゼスは一度大きく息を吸って、吐いた。
道を開いてくれているのが、見える。
言葉を交わすことは、出来ないだろう。
だからこそ、



「ヒョオオオオオ!!行くぞ!ワレらァアア!!」



声だけは届くよう、叫んで駆け出したモーゼスの後に続くように、クロエ達も山賊が切り開いてくれた道をひたすら駆けた。
家族だとも言っていた彼らが、傷付き倒れ伏す姿も見えているだろうに、モーゼスは決して振り返らない。前しか、見ない。
シャーリィももう、前しか、見なかった。
戦場には慣れることなどはないけれど、今は、ただ。



「皆さん、あそこです!」



叫んだジェイの言葉に促されるまま、クロエ達は艦橋の入り口へ駆け込んだ。
トリプルカイツの面々の姿は見ていなかったからこそ、艦橋の中で控えているのだろう。
一度も勝てなかった相手だ。
けれど、まさか今度ばかりはそうもいかなかった。

もう、負けない。




全てを、取り戻すために






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