「リッちゃんがつけてるそのブローチさ、あたしがずーっと探してるやつに似てるんだよねー。と言うわけでちょっと聞いていい?そのブローチどうしたの?」



口調こそは明るく軽いが、目だけは反して真剣にブローチを見つめて言うノーマに、指摘されたシャーリィは戸惑っているようだった。
と言うかお前それ、俺じゃなくてシャーリィに話があるんだろうが、とセネルは思ったが、何を言ってもどうせ聞かないのは目に見えているので、言わない。
急に今まで話したことのないブローチの説明を求められ、シャーリィはどうしたらいいか困りながらも、辿々しく言った。
セネルはノーマに対して顔をしかめているが、気付きそうにはない。



「え、えっと…このブローチはお兄ちゃんとお姉ちゃんからもらったので、あの…よく知りません…」
「セネセネ!あんたこのブローチ、どうしたのさ!」



よほど気になるのか、人を指差してまで聞いたノーマに、セネルは頭が痛くなった気がしたが、ここで諦めないだろうともわかっているからこそ早々に断念した。
早く行かないと自分にまでウィルの鉄拳制裁が下ると目に見えているからこそ、さっさと会話を切り上げるべく口を開く。



「…別に、どうだっていいだろ。それをシャーリィに贈ったのは俺だけじゃないし、答えれない」
「だぁー!もうセネセネってば頭固いなぁ!あたしだってこればっかりは譲れないの!ようやく見つけれた手がかりなんだから!」
「………お前は何を探してるんだ」
「エバーライトよ!」
「エバーライト?」



よくぞ聞いてくれました!とばかりに堂々と言い放ったノーマに、セネルもシャーリィも不思議そうに首を傾げた。
聞いたことのない名に、なんだそれ?と目で訴えれば、意気揚々とノーマは説明する。
なんでも遺跡船にある秘宝とやらで「どんな願いも叶えてくれる奇跡の秘宝」とのことらしかった(説明しているその最中に、とうとう呆れ果てたのか付き合いきれんとクロエが先に行ったのは、見なかったことにする)(まあ、見捨てられるわな)。
目を輝かせて語るノーマに、そんなものがあるんですか、とシャーリィは驚いていたが、セネルは少しだけ腕を組んで考え込んでいた。

遠い彼の日を思い出す。
見つけたのはあの優しい彼女の方で、教えてくれた、その名は。




「…悪いがそのエバーライトってのを探してるんなら、このブローチは外れだ。そんな名前の石じゃない」
「ええー?!うーん、確かに似てるんだけどなぁ…」
「話はそれだけだな。行こう、シャーリィ」
「あ、うん。お兄ちゃん」
「ってこら〜!人を置いてくな〜!!」



喚くノーマを無視して、セネルはシャーリィの手を引いてとっとと進むことにした。
先程まで塞がれていた場所まで出れば、ぽっかり開通した穴とハンマー片手に怒っているウィルの姿と、呆れ顔をしたクロエの姿が見え、ノーマが怒鳴られているのを横目に、キュッポとピッポの後を追う。
そうして周囲の警戒はしつつも、時々話をしながら進んだ一向のその先に、外へと繋がる扉(壁にしか見えないのだが)がようやく見えた。
あとは爪術でここを開けるだけだな、とウィルの説明を聞きつつ、シャーリィは何気なく手を引いてくれているセネルを見上げて、気付いてしまった。

彼の顔色が、とてもじゃないが大丈夫などと言えないほど、悪くなっていることに。



「お兄ちゃん…」
「平気だよ、シャーリィ」



か細い声で呼べば、曖昧に笑ってセネルが言うから、シャーリィは悲しげに顔を歪めることしか出来なかった。
一体いつからだったんだろう、と考えたところで今更で、ただただギュッと力を込めて手を握り返すことしか、出来ない。
不安になって、心配になって。
もう一度声を掛けようとした瞬間、しかし突如再び大きく地面が揺れたから、それは叶わなかった。
また地震か?!とクロエの声が聞こえたが、続くキュッポとピッポの悲鳴染みた声に、首を傾げることぐらいしか反応は出来なかった。



「キュ〜!!長長悪魔が来るキュ〜!」
「もうおしまいだキュ〜!!」
「長長悪魔…?」



なんだそのネーミングセンスは、と怪訝そうにキュッポとピッポを見れば、二人とも怯えて地面に踞ってしまっていたからおや?と首を傾げたのだけれど、次の瞬間地響きと共に魔物の姿が現れたから、咄嗟に戦闘態勢を取り現れたそいつを見据えた。
うげっ、と顔を歪めたノーマにセネルもクロエもおんなじような気分なのだが、一人目を輝かせたウィルの姿の方に、呆れることしか出来ない。
とりあえずモフモフ族の付けた名前はあながち間違いではなかった。



「ちょっとー!なによこれ気持ちわるっ!!」



叫んだノーマの言葉を耳に正面を見れば、まるでミミズでも彷彿させるような、長い胴体をうねらせて襲い掛かって来る魔物の姿が、そこにあった。




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