一体いつの間に話し合ったのか知らないが、どのみち1つしかない選択肢に気付いたのか結局同行者はもう1人増え、「このまま全員集合されたら破産するんじゃないの?」と笑えない冗談を言ったレイヴンにリタがファイアボールをぶつけたものの、どうしたことかその緑色の髪をした2歳児加入以降、『オールドラント』の人間が姿を現すのはピタリと止んでしまった。
まあ別に異世界の人間ばかり気にしている場合でも無くて、ラーギィにはめられてノードポリカでフレンやザギ相手にゴタゴタしたかと思えば、カドスの喉笛で追い詰めたラーギィの正体がイエガーだったり、マンタイクに着いたらバカな執政官のせいで街の住人が、子ども達が困っていたりして…ぶっちゃけずとも他に構っている場合でなかったと言えば構っている場合ではなかったから不都合はないのだが、残りの面子を考えるとどうしても眉間に皺が寄ってしまう。
と言うのかフェローに会いに行かなければと意気込むエステルの隣に見えた、カロルと一緒に何か話していたイオンを見て、そういえばと思い出したぐらいで、ジェイドとアッシュは極力視界に入らないようにしているのが分かっていたから、あまり気付いてもいなかった。
そうして盲目的に信じていたのだろう。
隣に居るルークは、ずっと、ここに、俺たちと共に、居るのだと。


約束も、されてやいないのに。










「あっちぃ〜…あー!もう苛々する!砂漠なんてほんとだいっ嫌い!!」
「お、落ち着いて下さい、リタ!お水飲みます?」
「水は飲むし飲まなきゃやってらんないけど、なにこれ何なのよここなんであんなにおっさんは平気なのよ!!」


砂漠を行くことに一番危機感を抱いていたリタが何を喚くかと思っていれば、どうやら先を行くレイヴンのあの余裕っぷりが我慢出来ないのか、今にも術をぶっ放し兼ねない雰囲気に、慌ててエステルが宥めるも、あまり効果は無さそうな真っ昼間だった。
滴る汗なんかもう拭う気にもなれず、ルークの手を引きながらユーリは道案内気取りでリタの神経をピンポイントで逆撫でするレイヴンに呆れつつも、そのうちジュディスがとんでもないことをしでかしそうで成り行きを見守るぐらいしか、ない。
足取り軽いのはレイヴンだけだったりするので、いつ誰が爆発するのかと思えば気が気でなかったのだが…どうでもいいと言ってしまえばわりとどうでも良かったりもした。
とりあえず機嫌が良過ぎるだろう、お天道様も。


「たっく…こんな暑い砂漠に碌に準備もさせずに街の人間放り込むとかほんと考えらんないわ…ああ、腹立つったらもう!」
「そんなに怒ってばかりいると、余計に暑くなっちゃうわよ?それに、早くあの子たちのご両親を見つけないと干上がったミイラは洒落にならないもの」
「…それ、笑えないから」
「そうね、わたし達にも可能性があるものね」
「不吉なこと言わないでよバカ!!」


喚くリタと冷静でありつつ砂漠にうんざりとし始めているジュディスとの会話を聞きつつ、さり気なくジェイドが視線を逸らしていることに気付けた上で理由を知っているのはユーリとアッシュだけだった。
2人共に共通してルークの記憶を知っているから、だが…ケセドニアに向かうまでの道中、砂漠越えを何の準備もなしに突っ込んで行ったとあれば、そりゃあ顔を背けるしかないだろう。
よくぞ生きてたもんだと今更思ったのかジェイドの顔色はどこか蒼白く、アッシュもなかなかに眉間に皺を寄せていた。

嘗めてたんだろうな、と顔色の悪い2人を横目に見つつ、ユーリもまた、どことなく血色の悪い顔をしているのだが、単にもしもの可能性が頭に過ぎった結果なので、自分のことは棚に上げておく。
そうして案外砂漠ってのは、歩き難いのな。なんて思いながら進んでいたのだ、が。



「やっぱり!ユーリとルークなのじゃ!」
「うおっ?!」
「……パティ?」


ザバッ!といきなり砂の中から掻き分けて撒き散らして腰にしがみついて来たパティの登場に、これにはユーリも思わず支え切れずに、ルークの手を掴んだまま3人揃ってひっくり返ってしまった。
なにやってんのよー、とリタから心底呆れたような声が返ってくるものの、ちゃっかりエステルとジュディスがルークを助けている辺りがなんとも言えなかったのだが、パティから助けようとイオンが手を差し伸べて、そして。


「おお!この前は助かったのじゃ!うちの腕もちょっと鈍っとって…………ん?なんじゃ、前と髪型、変えたのかの?」
「……はい?」


きょとんと目を丸くしたかと思えば、すぐにそう言ったパティの言葉に、これにはその場に居た全員が…否、アッシュ以外の面々が不思議そうに目を丸くしてしまった。
「パティ、誰かと勘違いしてるんじゃないの?」とカロルが言ったものの、パティは「そうかもしれんが…でも、ほんとにそっくりだったんじゃがのぅ」なんて返すのだから、この言葉でエステルやカロル、そしてルーク以外は察してしまう部分がある。
最初から気付いていたアッシュは、苦々しく顔をしかめるばかりだった。

可能性の1つとして、は。




(まさか…シンク、か?)



この時期にフローリアンはまだ救出されていないからと、導き出せるその記憶があることに、また苦々しく顔をしかめるしか、ないのだけれど。



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