「お答えする気はありません、とそんなことを返したらどうするつもりです?」


にっこり、笑って言えば良かったものの、口元が僅かに微笑もうとして失敗しました、な表情に面白いぐらい被験者一行様が固まったから思わず鼻で笑ってしまった。付き合い切れないと言うか相手してもここまで何の実りも無さそうに思えると、やる気も何もかもが無くなってどんどん面倒臭くなってしまう。そろそろダアトに帰ってシンクも一緒にお茶会でもしたいなぁ、とレティはアリエッタのライガの背を撫でながらぼんやりと考えていたのだが、我に返ったらしい癇癪持ち達の喧しい声に思わず溜め息を吐いてしまった。その元気を他に回せば良いだろうに。人間の女って嫌だなぁ、と自分の性別を一切無視して思ったりもしたのだが、まあ人間じゃないと気にもしなかった。あんなみっともなさ、身に付けたくなんかない。


「疑問があってすぐ答えを求めるのは愚かしい行為ではありませんか?バルフォア博士。少し考えたら分かることです。まあ、レプリカ如きにそこまで時間を掛けたくないと仰られるのなら、すぐに答えを差し出してもよろしいですが」
「……」


そこで無言を返す辺りがまた何とも言えない反応なのだが、そろそろ我慢ならないのか不機嫌そうにアリエッタが人形を抱きしめる手に更に力を込めたのが分かったから、さっさと答えてやって切り上げることにした。同じ空気を吸っていたくないレベルまで嫌いなんですか?アリエッタ。
小声で聞いたら、間髪入れずに頷かれてしまったから、レティはもう何だかな、とちょっとどころか大分面倒臭くなった。今更だが。



「…ここでこのまま求めれば無能軍人とでも言われるでしょうが、構いません。答えを教えて下さい、レティ」


仕様もないプライドだけはあった筈の似非軍人1の言葉に、中でルティが爆笑したのが分かったが、頼むからもう少しボリュームを下げてくれと聞かないだろうが訴えたくなった。腹が捩れる程指でも差して笑ってやりたいとは確かに思わないこともないが、アリエッタのライガとフレスベルグももう限界、とばかりに目で訴えてくる何かがあるので、仕方なくレティは答えてやる。


「無能どころか似非軍人だと思っていましたが、まあいいでしょう。この姿について、でしたね。これは私が私として在れたのなら、本来象れた筈の体。第七音素で干渉して少しいじっているだけです。『ルーク・フォン・ファブレ』のレプリカの体には何の支障もありませんよ。この体は、私の精神年齢を反映したものと捉えて下されば結構です」
「…それだと、ニコルの説明はつきませんが」
「あの子はまだまだ幼くて上手く第七音素を扱えないだけですよ。一番最後に目を覚ましたので、あの子はまだ5歳の子どもと変わりません。そしてルークは7歳。私は12歳、ぐらいですかね。精神的年齢と言うのは、意外とあやふやですので」
「どういうことです?」
「良いことと悪いことの区別の付かぬ体だけ大きくなった脳内5歳児レベルが多い、と言ってるだけですよ。それが誰、とは言いませんが」


にっこり笑って告げた言葉は、完全にアニスを除いたあと2人に向けられていたのだが、当人達には伝わっていなかった部分もあるらしく、その頭の悪さにレティは呆れたような視線を向け、これには流石のジェイドでも頭が痛くなっていた。
あんたもそんなに変わらなかったけど、とジェイドにさえも容赦なくレティは訴えていたりするのだが、口には出さなかっただけ、まだ優しさがある。
それよりいつまであのバカな被験者は間抜け面を晒しているのだろう、とレティは自分達の被験者を見ながら思っていたが、下手なことをするとニコルが飛び出して来そうな気もするので、不意打ちだけは止めておいてやった。
ルティほど短気でなければニコルのように駄々をこねるような真似はしない。
確かにそう思っていたのだ、が。



「何故あなた方はそんな真似をするんですか?今は問題無くとも、他者に視認出来る程第七音素を使って姿形を変えるのは、あなた方の体には酷なことである筈だ」



プツン、と。
堪忍袋の尾が切れたのはその瞬間だった。バカだバカだとは思っていたが、ここまで大馬鹿だとは思っていませんでしたよ、いや、マジで。



「それは自分自身の体を持てている被験者特有の考え方と言うことでよろしいですか?もういいです。これ以上あなた方と話したいとも、私は思わない!」


感情のままに言い切ったレティに、しまったとすぐにジェイドは自分の至らなさに気付き、ガイとアニスもこれは不味いと思ったが、その事実に気付きもしない人間が居ることが、何より不味かった。現にナタリアとティアは「何を勝手なことを言ってるの?!」と声を張り上げて、それがどれだけ誰を傷付ける言葉なのか気付こうともせず言う姿には、流石にあのアッシュでさえも呆気に取られている。と言うかようやく復活したんですね、被験者ルーク。
とレティの呟きを拾ったライガとフレスベルグは怯えていた。魔物相手に既にこれ。


「やっちゃいましょうか、アリィ」


言ったレティの言葉に、アリエッタが待ってましたとばかりに頷いたのが、合図だった。
やっちゃいましょうか、と言うか何か間違いなく変換は殺っちゃいましょうか、だったりするからかなり恐ろしくアニス何かは思ったりしているのだが、ここで止まるようなレティじゃない。



「くたばれ、非常識共め」



吐き捨てるように言ったその言葉に、アリエッタが「本音が出てるです、レティ」と手を繋ぎながらそう言ったけれど、レティはそれはそれは綺麗な笑みを浮かべるばかりだけだった。



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自意識過剰な僕らの窓・7





この話はどこまで続くのか…(苦笑)








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