「皆さん!来て下さったのですね!」


ケセドニアの宿屋で一泊した後、ザオ遺跡へ向かう過程で訪れたオアシスで、何故か浚われた筈の導師イオンの姿がそこにあったから、これには全員が全員ギョッと目を見開いていた。
バチカルでも直接会話をしていないあのナタリアですら口元を押さえて驚いていると言うのに、しかし一番後ろを着いて歩いていたルークは複雑そうに顔をしかめている。
結局、昨日のことはルークに問いただせなかったジェイドはその反応にいろいろと思うことはありつつも、とりあえず導師に駆け寄ったアニスに視線を向けることにしておいた。
側に居るガイが、苦く笑っている。
ナタリアやティアの反応は酷いものだったが、ルークは気にも止めず、寄り添う黒い毛並みの犬にばかり、視線を向けていた。


「イオン様!大丈夫でしたか?!」
「はい、心配をお掛けしてすみません、アニス。僕は大丈夫ですよ」
「良かったぁー…もう、イオン様ったらびっくりしましたよぉ!あ、でもなんでこんなところに…?」
「それが…僕にもよくわからないんです。タルタロスが止まったと思ったら急にここで降ろされて…ここに居たら親善大使一行が来るだろう、としか言われてないんです。申し訳ありません…」


俯きながらも言ったイオンの言葉に、ジェイドが何やら考え込んではいたものの、とりあえず導師の無事にアニスやティア、ナタリアが喜んでいた。
一体いつの間にあんなに仲良くなったんだろうな、とルークは呑気に思いつつも、レイラからすればかなり納得いかないようで、何だか嫌な雰囲気が伝わってくる(どうかしたのか?とそれでも聞こうとしたルークに、若干気付いていたイオンが青ざめていたが、残念ながら気付いてくれそうにはない)。
和気藹々、とした空気が流れていたが、やがて考えがまとまったのか今まで黙っていたジェイドが口を開いた。
至極当然な、流れの。


「皆さん、とりあえず今はケセドニアに戻りましょう。イオン様は無事でしたが、もしかしたらまだこの辺りに六神将が居るかもしれません。彼らに見つかる前に、ここを立ち去るべきです」


淡々と言ったジェイドの提案に、わざわざ否定する人間も居らず、ルーク達は素直にケセドニアへ戻ることにした。
待機させてあった馬車にナタリアとイオン、そしてルークを乗せて進み、その周囲を守るようにジェイド達が進む。
ケセドニアに着いた時、もう既に夕暮れに近かったが、明日からアクゼリュスへ向かうこともあり、何か買い出しが必要かどうか、そうして宿屋へ向かうべく全員で行動を共にしていた。
夕焼けの色に、砂漠の街が染まっている。

明日から、アクゼリュスへ向かう。
その事実に、ルークはケセドニアでキムラスカ側からナタリアを引き取りに来ない現状に密かに焦っていて、だからこそ目の前に見えた緑色に、周りが呆然とするまで気付けなかった。

−−−どうして彼が、ここに。



「お久しぶりですね。こんな暑い中を砂漠越えなんて大変だったでしょうに。元気にしてましたか?」


にっこりと笑んで告げた緑色の髪をした少年の姿に、こればかりはジェイドですらも目を見開いて立ち尽くしていた。
呆然と、してしまう。
それほどまでに彼はそっくりだったのだ。
自分達と共に居る、導師イオンに。



「−−−シオン、」



誰も言葉を紡げないままで居るその時に、不意に一番後ろを着いて歩いていたルークがそう言ったから、ギョッと目を見張ってナタリア達が振り返った。
ジェイドは目の前の少年から目を離さない。
離すつもりが、ない。


「はい、本当にお久しぶりですね、ルーク」


イオンと同じ顔で笑んで言った筈のシオンに、それでも誰もが、警戒を解くことは出来なかった。




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