「ねぇ、あんたちょっと、意味わかんないんだけど。六神将とか、え、は?」
「は?じゃなくて。シンク、あなたには六神将になってヴァンの動向を探ってもらいます。スパイですよスパイ。かっこいい」
「棒読みでかっこいいとか言われても腹立つだけなんだけど!と言うか無理でしょ。僕は廃棄処分決定された導師イオンのレプリカなんだよ?六神将とかどうやって」
「自分自身のことをそんな風に言ったのをルークが聞いたらどう思うでしょうね?シンク」
「………、」
「六神将になる為にはヴァンに拾われるのが一番ですね。幸い昨日の今日であの男ならザレッホ火山に様子を見に行くことでしょう。タイミング図って出て行けばおそらくすんなりことは運びます。と言うわけでシンク、一回火口に落ちて下さい」
「は?!そんなの絶対嫌だよ!」
「ローレライに頼んでギリギリまでノーダメージにしますよ。ちょっと引っかかって、あとは如何にも今よじ登って来ました感を見せるんです。あなたなら出来るでしょう」
「出来ないことはないだろうけど嫌だよ無理」
「僕達の目的はなんですか?シンク」
「……いきなりなに」
「良いから言え」
「……預言歪めつつ、その為に死のうとしてるルークを助けること」
「その為に一番の問題は?」
「預言に詠まれてるアクゼリュスの消滅」
「さっき僕が話した男の目的は?」
「レプリカだと勝手に勘違いしてルークにアクゼリュスでなんかさせようとしてる」
「となるとヴァンの計画を探る為にも、スパイは必要でしょう?」
「それはわかるけど…!」
「フローリアンに出来ると思ってるんですか」
「…………無理だと思う」
「シンク、僕だって自分が酷なことを言ってるのはわかってます。ですが、これはあなたにしか頼めません」
「…………」
「シンク、あなたもルークを助けたくはないのですか?」


数十分もの間ひたすら繰り返されたやり取りの末、散々頑なに拒み続けていたシンクだったが、最後の言葉が決め手となり了解した。
わかった、と告げればシオンがにっこり笑う。
頗る癪ではあったが、シオンの言う通り、悪いがフローリアンにそんな芸当が出来るとは思えないので半分仕方なくもあった。


「さて、となると決行は今日の夜でしょうね。あの男はどうせアリエッタの魔物を借りているだろうし、深夜にはダアトに着くでしょう」
「アリエッタ?」
「六神将になればわかります。彼女もまた良き内通者となってくれるでしょう。会いに行かなくてはならない人物です。と言うわけでローレライ、ヴァンがザレッホ火山に着くこととかあなたなら感知出来ますよね?」


暗に感知出来て当然ですよね?と言っているシオンに、シンクは若干顔を引き攣らせていたが、ローレライが『問題ない』とあっさり返してくれたからほっと息を吐いた。
それにしてもこいつ説明が中途半端過ぎて不安でしかないんですけど、とシンクは心の中でぼやくが、口に出すことはしない。
トントン拍子で話が進んでいく中、途中で飽きたのか集中力が切れたのか、フローリアンはルークの横で眠っていた。
こいつにスパイは、不可能だ!


「じゃあもう僕は、今日の夜でお別れってわけ?」


つい不機嫌になりながら聞いてしまえば、笑顔のシオンがあっさり言った。


「まさか。あなたがある程度の地位を築いたら即刻連れ回しますよ。自由が利くようになったら覚悟しとくことですね」
「…………どこに、とかは今は聞かないでおくから」
「四人で世界中を回る…いや五人?あ、六人ですね。六人で目指せ世界征服」
「聞かないから!僕は何も聞かなかった!」


全力で否定したシンクに、これまた楽しそうにシオンが笑った。
これだけ騒がしいのに眠ってるフローリアンとルークに、僕もそっちで寝たい…とシンクは逃げ出したくなったのだが、とりあえず今は話を進める。
誰かがノックしてきた場合とかは速攻でフローリアンの首根っこひっ捕まえてクローゼットの中に隠れなければならないのだ。
そうなる前に、話はきちんと決めておかなければならない。


「……と言うかちょっと待ってよ。六人って一体誰と誰と誰と誰と誰と誰?」
「分かりきってることを聞くのは馬鹿みたいですよ、シンク」
「分かんないから聞いてんだよわざわざさ。ここに居る四人が絶対なのはわかるけど」

さりげなくローレライはなかったことにしてしまったが、意識集合体だからカウントしなくても良いかと自己完結。


「あとは簡単でしょう。さっき言ってたアリエッタと、もう一人居るでしょう?いまダアトに居る、僕達の兄弟が」
「……ぁ、」


呟いてから、シンクもようやく気が付いた。
たった一人、レプリカとして、『導師イオン』の代わりとしてしか生かされていない、同じ存在。



「導師イオンとされている彼に、今夜会いに行きましょう」





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