「ふっざけんじゃねーぞこの預言中毒無能ジジイ!!つーかテメェらも頭がボケてるバカに付き合う前にちったぁ自分で物事考えやがれ優れてんじゃねーのか被験者アホ兵士共!!ありんこの方がまだまともな生き方出来んぞくたばれバーカ!!!!」



つーか死ね!!と、怒鳴り散らして中指を立てて言ったルカの言葉に、同じ部屋に押し込められたサフィールは「なぜこんな柄の悪いチンピラのように成長してしまったのか…」と頭を抱えて嘆き、閉ざされた扉に思いっきり蹴りを入れたルカに本気で泣いていた。そんないきなりのダアトの初日だった。
グランコクマに滞在中だったというのにいきなり押し掛けて来たキムラスカの軍人達にはいっそ感心するぐらいの無謀っぷりではあったが、全く理解出来ぬままにルークと共に船に押し込まれたのはこちらの落ち度であるし、アスラン・フリングスの元にシュウ医師を残せただけまだマシではあっただろう。
何の因果か知らないが抗議をするにもちょうど味方であるピオニーは不在な為成す術が無く、その空気の読めなささに頭を抱えつつも着いた先がダアトだったことは運が良かったと言うべきかサフィールには判断がつかなかったが、途中でルークと引き離されたことには苦々しく顔を歪めるばかりだった。


キムラスカの思惑が、全く読めやしない。


もしかしたら、と思わないこともないことは1つだけあったが、それはあんまりにも誰の為にもならないことだった。
嫌な予感がする。
ダアトと言うことはザレッホ火山にジェイドやアッシュ達が向かっていた筈なのだから、どうかタイミング良く戻って来てキムラスカの暴走を止めてくれると、助かるのだが。




「ルカ!サフィール!」
「お2人まで、どうしてここに?!」



怒鳴り散らしたルカが扉を何度か蹴った辺りで、ようやく周りを見る余裕が出来たその瞬間、叫ばれたその声に慌てて振り返って、サフィールはこれはないな、と思わず何の面白みのない天井を仰ぎ見てしまう程ではあった。
現れたのはアリエッタとイオンで、そしてその奥の部屋に包帯だらけの、それでも元気は良さそうなアニスがベッドに横たわっているのも見えて、オリバーとパメラの姿には失笑さえも出来ないだろう。
出て行った時よりも多少短くなっているアリエッタの髪と、常の導師の服ではない、みすぼらしいまるで囚人のような服を着せられているイオンの姿にルカが驚いて駆け寄ったのが見えたが、この年まで狡賢く生きて来た分、サフィールは大体の察しがついた。
ダアトのあちこち至る所にキムラスカ兵が多く居たことやら、アリエッタと共に向かった筈のシオンが居ないと言うこと。
シンクの姿がないと言うことはおそらくシオンに逃げるよう指示を受けたのだろう。あの優秀な元参謀総長がそう簡単に捕まるとは思えないのでシンクに関しては心配はしていないが、それにしてもキムラスカも随分とバカな真似をしたな、としか思えやしない。



「イオン?!それにアリエッタまで!なんで?つーか襲撃は?リグレットは?シンクとシオンはどうしたんだよ!」



驚きながらもとりあえずそう捲くし立てるように言ったルカの言葉に、「タトリン一家は総スルーなんですか?ルカ」とサフィールは思ったが、ちょっと言えそうにない雰囲気だったので黙っておいた。
聞きたいところが違っていなければその内容も確かに知らなければいけないことで、とにもかくにも状況をさっさと把握して行動に移さなければ不味いだろう。
そして合流出来た癖にいつまでもイオンに囚人のような格好をさせていたとあれば、今頃凄まじく機嫌の悪い元導師に殺される気がかなりした。
がさごそととりあえずタンスの中から着替えを探す。
兵士ぐらいの服はあるだろうと思った通り難なく服は見つかって、これでいいかと手に取って振り返った瞬間アニスから「あんたそれって泥棒と変わんないじゃん」と言う目で見られていたが、サフィールは気にしないことにした。
ここでどこからともなく自分と似たような服を出した場合の方が、全力で引かれるだろうとは簡単に読めた話であるので。



「それが…リグレットの方は僕に惑星預言を詠ませようとダアトを襲撃したのは分かるのですが、その後のキムラスカの動きが全く分からないのです。無理やりここへ閉じ込められたかと思えば、アリエッタまで、ここに」
「シンクが今動いてる…です。でもアリエッタ、シオン様と離れ離れにされて…何も分からない、です。ルカとサフィールは、なんで…」



思った通りのイオンとアリエッタの言葉に、どういうことか分からないと眉間に皺を寄せながらもルカが「グランコクマにあいつらいきなりやって来て無理やり連れて来られたんだよ。ほんっとに意味分かんねー!フローリアンはシルフに逃がしてもらったらしいけど、腹の虫がおさまんぬぇー!!」と説明になっていない説明をしたのだが、その補足をするよりもまずサフィールは把握しつつある現状に血の気が引き、思わずらしくもなく壁でも殴りつけてしまうところをなんとか、堪えた。

あんまりだろう、これは。

確立されつつあるこの先を、一体誰が、望んだのか。




「こちらに着替えて下さい、イオン様。アリエッタ、着替えの手伝いを。アニス・タトリン、トクナガを貸しなさい。壊れているのでしょう?5分で直します。準備が整ったら巨大化させて扉を壊しなさい。早いところここから出ますよ」
「ぇ、は?おい、どういうことだよサフィール!!」



どういうことだよメガネ!!と言われなかっただけマシな扱いになったのか、とそんなしょうもないことを考えつつ、サフィールはアリエッタにイオンの替えの服を渡してトクナガへと手を伸ばした。
困惑したような表情で視線を向けて来るのはルカだけでなく、それこそアニスやアリエッタ達全員なのだが、気にしている場合ではないだろう。
一刻も早くこの部屋を出なければ、取り返しが付かなくなるのだから。





「ルークが連れ去られました。このままでは彼はキムラスカに殺されますよ」





そうしてその結末を、愚かにも人は世界を救ったと、そう口にするのだ。






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