あんまり関わりはなかったし、その機会の方がずっと少なかったけれど、ノエルがルークのことを話す時は、アリエッタがシオンのことを話す時と似ていると思った。
見間違いじゃなきゃほんの少し赤くなったほっぺたと、嬉しそうに目を細めて笑う姿が、シオンのことが大好きなんだとぽつぽつと話したアリエッタと同じような気持ちなんだと、生まれて三年も経っていない俺でもよく分かる(身体は五年生きてるけど、あんまり関係ない話か)。

ルークはノエルのことをあまり自分から話そうとはしない。
話す機会があってもどこか躊躇いがちに口を開いて、結局言いたいことの半分も言えずに、黙ってしまうことがほとんどだった。
それを照れているんだと教えてくれたのはシンクとサフィールで、つまらなさそうに口を尖らせたのはシオン。
男の嫉妬は醜いよ、とシオンはシンクに言われていたけれど、シオンがアリエッタに向ける気持ちとルークに向ける気持ちは違っていて、加えて言うならルークに向ける気持ちとシンク達に向ける気持ちも違っていた。

嫉妬にもいろいろな種類があるんだと、サフィールがそう言った。
その時はよく分からなかったけれど、今なら理解出来そうだと、アルビオールの機体の上に上がって話す2人の姿を見つつ、ルカはぼんやりとそんなことを思っていた。
ルークがシオンに向ける態度と、シンク達に向ける態度と、ノエルに向ける態度は違ってる。
つーかお前目眩起こしてたんじゃねーのかよ、だとか。
無理に大丈夫だって言い張ってでも彼女と共に時間を過ごそうとする姿に、本当は止めなくちゃと思うのだけど、そうすることが出来ないのはきっとそんなに先が続いていないと分かってしまっているからだ。
……酷ぇ矛盾。



「ルカ殿?」


アルビオールの中に入って遊びに行ってしまったフローリアンを放置しつつ、いろいろなことを待っていた時に不意に掛けられたその声に、ルカはおや?と思いつつもとりあえず振り返ってみて、それからどうしたものかと固まってしまった。
青い軍服に、銀色の髪。
アルビオールの停めてあるグランコクマの港に姿を現すことは別に有り得ない話ではないが、タイミングが悪いと言うのか、何というか。

「えーと、あんたは確か…フリン…フリ…」
「フリングスです」
「そうそう、フリングス…少佐?将軍?」
「アスラン・フリングス少将です。どうかアスラン、とお呼び下さい」
「…だったらあんたも、ルカって呼べばいい。あんまり、そういう風に言われんの慣れてねぇから」
「分かりました。ではこれからルカと呼ばせて頂きますね」
「……おう」


穏やかな笑みを浮かべたまま話すアスランに、ルカはそもそも人の名前を覚えていられなかった自分が悪いとは自覚しつつも、変な奴、と言いそうになってどうにか口にすることなく堪えておいた。
港にあるベンチに座っていたルカの隣に、わざわざ断りを入れて座ったアスランにレプリカ相手に変わった奴、と言う認識は拭えないし、何より自分なんかを相手に話をしようとそんな姿勢を見せるのが、とりあえず理解出来やしない。
早く戻って来いよフローリアン…!なんて考えたりもしたのだが、すぐに馬鹿らしく思えて止めた。
気にしたところで、何か現状が変わるわけでもないだろうに。


「…あんた、こんなところに居ていいのかよ?仕事は?」


って、何を聞いてんだよ自分!と聞いてからルカは頭でも抱えたくなったのだが、にっこり笑って言ったアスランの言葉に、まさか凍り付くような目に合うとは、全く思ってもいなかった。


「陛下を椅子に縛り付けて来たので、とりあえず一旦休憩なんですよ。ついでにもっと丈夫な縄と鎖でも購入しようかと思いまして」


さらりと言ったそのアスランの言葉に、ああ、こいつシオンと同類なのか、とルカは思ったがまさか口に出せる筈もなく、身内だからこそ容赦ないその姿勢に実を言うとかなりドン引いたが、どうにか堪えて気にしないことにした。
とりあえず、俺は何も聞かなかった。聞いていなかった、と言うことにして流しておかないと、何だかシオンを相手にするのと同じぐらい怖い想いをする気がする。
その購入予定の縄と鎖の使用用途を聞いたら最後、死ぬより恐ろしい目に会いそうな気がするのは、多分気のせいじゃない。


「ルカは、こちらで何をなさっていたのですか?」


聞いて来たアスランの言葉に、ほんの少しだけルカはなんて答えるか迷ったけれど、結局黙っていたところですぐにバレてしまうだろうと思ったので、素直にアルビオールの機体の上に座る2人へと指差した。
待ってるんだとそう口にせずとも伝えれば、最初は微笑ましく見守ろうとした癖に、何故かジッとこちらを見てきて、その居心地の悪さには思わずたじろいでしまうぐらいだった。


「なっ、なに人のことジロジロ見てんだっつーの!」
「あ、いえ…ジロジロと見るつもりではなかったのですが、ちょっと…」
「…ちょっと、なんだよ」


わざわざあえてそこで切ったアスランの言葉に、睨み付けながらもルカはそう聞いたのだが、すぐに後悔する羽目になった。




「ルカの顔が、寂しそうに見えたんですよ」



ああ、余計なことを、どうしてマルクト人はこうも気付きやがるんだ!





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