いや、いきなりなんでそんな話になってんの?と思ったことをそのまま言えずに居たのだが、玄関先でぶっ倒れた2名を回収しに来たシンクとフローリアンのお陰でとりあえず客間へ行くことになったのだが、そこからのブリザード具合がなかなかに半端なかった。
初めて見るかもしれない、とそんな呑気なことを言っている場合ではないのだが、子どもみたいに口を尖らせて拗ねているルークの姿をルカは今まで見たことがなかったし、すっかり臍を曲げたシオンと比べると何だか笑えてくるのだから、不思議なものである。
その隣で長い間、事の結末を見届けたいとピオニーが駄々をこねていたのだが、問答無用とばかりにアスランに引き摺られていって、それからがまた凄かった。
お互いに意識して顔を合わせないなんて、この2人の間では有り得ないとばかり思ってたのに。


「アブソーブゲートとラジエイトゲート以外のセフィロトで、わざわざ僕らがザレッホのセフィロトを起動させておきましたから、残るはロニール雪山になります。このままイオンにダアト式封咒を解かせるのは負担が掛かり過ぎるので、ロニール雪山のセフィロトにはフローリアンに向かってもらいますね。僕らはケテルブルクで待っていますので」


にこやか、に言ったかと思えばすぐにふてくされたように口を尖らせたシオンにイオンは苦く笑いつつ、フローリアンは満面の笑みで了承したのだが、ケテルブルクと言う場所へ行く意味は分かったけれど何故こうも不機嫌なのか全く分からないルカとしては顔をしかめるぐらいしか出来そうになかった。
やれやれ、といつもなら呆れるだろうシンクも今回は何故か微妙な顔をしていて、やっぱりルカはどう判断したらいいのか、分からない。
ジェイド達のパーティにフローリアンが混ざると言うことに、明らかに何名かがほっとしたように息を吐いたのを「何なら僕自身が行って差し上げましょうか?」とにっこり笑顔で追い詰めるそのシオンの姿は相変わらず容赦なかったのだが、ルークとの間に流れる雰囲気が、非常に微妙な感じだと思った。
……何があったんだ?



「あ、あとシンク。あなたは彼らの戦力がかなり不安なのでちょっと手伝ってあげて下さい。2人が戻り次第、グランコクマに戻りますので」
「ダメ」


ピシッ、と。
一瞬で空気が凍り付いたような気が流石にルカでも分かったのだが、そっぽを向いたまま口にした珍しいルークの言葉に、何だかもういろいろとちょっとどうしたら良いのか分からないままだった。
笑顔を貼り付けたシオンは怖いが、ぷいっと顔を背けたルークはその背後で身悶えている某使用人の姿がチラついて、別の意味で怖い。
と言うかいつ復活した?あの変質者。


「まるでシンクにダメ出しでも喰らったかのようなタイミングで言ってくれましたが、グランコクマに居残りプランでも別に構わないんですよ?ルーク」
「い・や・だ」
「あくまで主張を曲げるつもりはないと?」
「曲げない。ティアとシオンの障気蝕害治すまでケテルブルクから帰らない」
「ならケテルブルクに住みましょうか。英雄御一行様が出て行くまでホテルに缶詰めで」
「だったら今から治す」
「却下です」
「助けれるなら助けたい!」
「却・下です」
「ならいい!勝手に治す!」
「却・下」


言うなり、立ち上がってティアに近寄ろうとしたルークを問答無用にシオンは後ろから羽交い締めにして、そのままソファに倒れ込んで行った。
押し倒すなどけしからん!だの仕様もない言葉を某使用人が言った気もするが、会話の流れで何となく内容を掴めたルカはそれらを一切無視して、盛大に溜め息を吐いてやるぐらいしかない。
もっとストレートな言い方はないのかよ、と言うのかなんと言うべきか。
シオンは勿論のことルークも意地っ張りな部分があるのだから、これは巻き込まれた面々が非常に複雑な想いをすることになるなとも思った。
きっとルークの体が丈夫だったら、殴り合いの喧嘩にでも今頃なっていたのだろう。
3歳ほど年が離れていると言うのに、普通ならルークの方が有利である筈なのに、シオンが馬乗りになって腕を押さえてしまえば、それまでだった。

強く押さえ込む必要すらも、どこにもない。
華奢な体。
細過ぎる腕。
青白い肌。
痕も残らないのは、それだけシオンがルークのことを、大切に思っているからなのだけど。



「−−−ルカ、フローリアン。今からルークと一緒にアルビオールまで行って、ノエルに書類を渡して来て下さい」


あ、それノエルを引き合いに出すのはズルいだろ、とフローリアンはともかくルカはそう思ったのだけど、睨み付けるように見上げるルークをソファに押し倒したまま言ったシオンに、反論は残念ながら言えそうになかった。
ふてくされたように顔をしかめたのは今度はルークの番で、シオンが上から退いた瞬間ぷいっとまた顔を背けてしまう。
顔面蒼白なのはむしろティアやナタリア、アッシュと言ったメンバーだったのだが、シンクの顔色も相当に悪く、これは帰って来た時にこの邸は消し飛んでいないだろうか、とルカは思ったが、しつこいことを重々承知の上で、やっぱり言える筈がなかった。



「とにかく絶対に、僕は認めませんから」
「−−−っ!シオンの分からず屋ぁ!」
「ルークもでしょうが!」


言われてしまえば返す言葉も無くなって、悔しそうに唇を尖らせたルークをとりあえずフローリアンと一緒にルカは外へ連れ出したのだけど、案の定響き渡った鈍い音の連続に「あいつ物に当たるのそろそろ止めてくんないかなぁ」と若干現実逃避をしながら、そう思うしかなかった。



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