家に帰ったら、まさかその玄関が面白いぐらい吹き飛んでいるとは、思ってもいませんでした。


「…なにやってんだ?お前ら」
「−−−っ他に何か言うことはないんですか?!」


キャンキャン喚くように言ったサフィールの言葉に、ルカは思わず呆れたような目をするしかなかったのだが、何だかどこぞの使用人とセットで煤けているその姿には憐れみしか感じなくて、とりあえず暴言だけは我慢しておくことにした。
が、一緒に来ていたアスランが笑顔で「そうですね、帰って来たのならただいまと言わないといけませんよ、ルカさん」と言ったのが何というか…こいつ、シオンと同じ匂いがすると思う。
若干顔を引き攣らせながらも、とにかく今はサフィールと使用人を無視して中へ入ろうとしたのだが、風通しのかなり良くなった玄関に、ひょこっと顔を出した金髪が見えたから、ルカは思わずおや?と首を傾げて、すぐに後悔した。


「おおー!お前さんが新しい家族の『ルカ』か!」


言われた直後、まさか一瞬の内に距離を詰められ、いきなり抱きしめられるとは流石に思いもしてませんでした。


「ちょっ、は、ぁあ?!」
「いやいやなっつかしいなぁー、初めて会った頃のルークと同じぐらいの身長だ」
「なんなんだよお前!離せっつーの!!」
「ん?別に良いだろう、減るもんでもあるまい。ルークは嫌がらなかったしフローリアンは喜んでたぞー?シオンには危うく殺されかけたが」
「1人でも嫌がった奴が居るなら止めろよ馬鹿!!離せ!」
「抱き心地は満点付けてやろうか?」
「マジ意味わかんぬぇー!!こいつキモい!」


なかなかに心を抉るような言葉を放っていたりするルカに、けれど全く気にも止めず男が笑顔で抱きしめたままだから、これには耐えきれないとばかりにアスランが笑みを貼り付けたままさっと動いた。
がっちりホールドした男の腕をあっさり外して、ルカを抱きしめ、背後に庇うように立たすべく移動させる。
呆気に取られたのはルカの方だったが、アスランに助けられたのは事実だったので特に反抗する気にはなれなかった。



「「セクハラです、ピオニー陛下」」


不満そうに口を尖らせたピオニーに向かって告げられた言葉が、なぜか二重音声のように聞こえたことにルカは首を傾げたが、満面の笑みでピオニーに音叉を突き付けているシオンの姿が見え…そしてかなり不機嫌なのも嫌でもわかったから、とりあえず黙っておくことしか出来そうになかった。



「お久しぶりです、シオン殿。この度は陛下がまた迷惑をお掛けしたようで、本当に申し訳ありません」
「いえ、フリングス将軍は早い段階で引き取りに来て下さるので、こちらとしてはそんなに気にはなっていないので、さっさと玉座にでも縛り付けてやって下さい」
「ああ、それでしたらルークさん達がグランコクマに滞在中は陛下の執務が倍になるよう会議を通したので、今後はあまり被害が出ないかと思われますよ」
「あまり、じゃなくて絶対だと助かるんですけどね」
「絶対に出来たらこちらとしても助かりますね」


にこにこ、笑いながら話している筈なのに、なんでかブリザードでも吹き荒んでいるようにルカは感じたが、お口にチャックを続行中なので無言を貫くしかなかった。
ふてくされたような金髪の男が陛下…つまりこの国の皇帝だと言うことに頭が痛くなりそうなのだが、アスランにまで何気に酷いことを言われているのだから、憐憫の方が多少勝らないこともない。
一通り話して気が済んだのか、玄関先に転がっているサフィールを足蹴にし某使用人に当たるか当たらないかのギリギリの位置に音叉を放り投げたシオンが、満面の笑みでこちらを見た。
……なんか、怒ってないか?




「お帰りなさい、ルカ。明日からケテルブルクに行きますよ」



いきなりそんなこと言われても分かんないんだけど!と言うツッコミは、流石にルカじゃあまだ出来そうになかった。




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