跪いて忠誠を誓う


※龍×暁じゃなきゃやだ!って方は読まないでください。
あと時間的には龍の鬚〜の六話の後(ピアス開ける前)くらいです。
一話の後にしたかったんですが、井上くんと暁ちゃんの信頼関係がある程度出来上がってからが良かったのと、龍くんにピアス開けられた暁ちゃんを見たときの井上くんが怖すぎたので。笑
それではどうぞ。

―――――




「アキちゃん、アキちゃん!」
「なに?」
「今日家まで送ってー!」
「はー?」
「だってさ、前、龍のことは送ってたじゃーん。俺見たよ?」

その言葉に心臓がドクンと大きく動く。

見られてたのか。
何て言い訳すれば…と井上を見上げると、拗ねたような顔をしているだけだった。
龍だけずるいー、とぶーぶー言ってる井上を見てほっと胸を撫で下ろす。

そうだよな。
ただ車で家まで送ったくらいで、俺たちがしたようなことを想像するような奴なんていないよな。
男同士だし。
俺、ビビりすぎだ。

「しょうがねぇなー。今日だけだからな」
「やったー!」

井上は大きく万歳したかと思うと、その上に挙げてた手で抱き締めてきた。

「アキちゃん大好きー!」




車内でも井上はうるさかった。

「アキちゃんが運転してるぅー!」
「そりゃすんだろ」
「横顔!横顔もかわいい!」
「うるさい」
「運転するアキちゃん写メっていい?レア写真!是非我が手元に!」
「やだ。だめ」
「かあわあいー!」

前を見ながら会話してると、井上は歌を歌い出した。
何の歌かと思って聞くと、アキちゃん、運転、俺、という単語がよく出てくる、よくわからない歌詞だった。
即興曲らしい。
そんなこと出来んのか。
すげぇな。


井上の家に着いた。
マンションだった。
井上に指定された場所に車を停める。

「じゃあ、明日な」
「えー!上がってってよー」
「いきなり先生来たら親御さんビックリすんだろ」
「今日いないからさあ!大丈夫!」
「でも…」
「おねがーい!」

その後、何度断っても、しつこく言われるため、少しだけという理由でお邪魔することになった。


「おじゃましまーす…」

誰もいないとは言え、緊張する。
とりあえずソファーに座らされた。

井上はバタバタどこかへ行ったかと思うと、俺にオレンジジュースを差し出した。

「あ、ありがとう」
「うん」

すぐ帰るつもりだったから、いいのに。
でも、緊張してたからか、ちょうど喉が乾いていた。
オレンジジュースを一気に飲み干した。

「はい」

井上が手を差し出してきたのでコップを渡す。

「ん」

井上に目線を向けると、いきなりものすごい眠気に襲われた。
なんだ?

「アキちゃん?」
「ごめ、なんか…ねむ…」

井上が俺の頬を優しく撫でた。

「かわいい、アキちゃん」

瞼の重さに俺は負けた。




*****

目が覚めると見慣れない景色にいた。
どこだ…ここ。

体を動かそうとすると上手く動かせない。
頭上に手が拘束されていた。
え、なんだこれ。
寝ぼけた頭が一気に覚醒してくる。

そうだ、俺は井上を家まで送って…。
じゃあ、ここは井上の家か?

井上のベッドにいる。
手はベッドヘッドに固定されているようだった。

「アキちゃん、起きた?」
「井上…」

井上がベッドに乗り上げてくる。

「なん…これ、井上がやったのか?悪ふざけは…ぁっ…」

井上が俺の頬に手を添えると、変な声が出た。

「な、なに、」
「オレンジジュースにね、気持ちよくなれる薬、入れといたからね」

体が熱いような寒いようなぞわぞわする感覚がする。

じゃあ…なんだ。
はじめから、こうするつもりで俺をここに呼んだのか?
何か、怖い。

「や、やだ、井上」

頬から手は下へと下がり、首を撫でられる。

「ひぅ…!や、だ…」
「アキちゃん」

井上を見上げると、どこか悲しそうな顔をしていた。

「龍とヤったでしょ?」

背中からゾワッと寒気がした。
怖い。

「し、してない!してない!」

何で知ってるんだ。
加賀見が言ったのか?
いや、それはない。
じゃあ見られてたのか?

「アキちゃん」





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