龍の鬚を蟻が狙う


「暁ちゃん!」
「ん?」
「暁ちゃんってさ、加賀見くんと三上くんと仲いいよね?」

仲いいって…。
そんな友達みたいな…。
俺、一応先生…。

「お願いなんだけど、好きなタイプ聞いといてくれない?」
「は?ちょっとま…」
「お願いねー!」

そう言って俺に手を振り、どこへ行ってしまった。

声をかけてきたのは、俺のクラスの女生徒。

直接聞けよ、とは言えない。
加賀見と三上は話しかけにくいよな、うん。
それにしても加賀見と三上モテモテだな。



昼休み、屋上でいつものように弁当食べてた。

さっきの聞いといた方がいいのか?

「加賀見と三上さあ、どんな女の子タイプなんだ?」
「アキちゃん!俺には聞いてくれないの!?」

井上がうるさいので、聞くことにする。

「井上は?」
「アキちゃん!俺のタイプはアキちゃん!」
「いや、女だって」
「性別なんて関係ない!アキちゃんが世界一かわいーんだからアキちゃんが一番!」
「……へー」

井上ってよく俺のことかわいいだの、好きだの、からかうけど、好きな女の子とかいないのか?
こんだけ明るくて話しやすかったら彼女くらい、いくらでもできそうなのに。


「みかんちゃんは?」

井上が三上に話を振る。

「俺?俺は男なら結構ハードル高いけど女の子はみーんな好き」
「タイプとか無いの?」
「無い。龍は?龍は結構厳しいよな」
「あー…嫉妬とか束縛されたら一気に冷めるな」

んー…何か胃がムカムカする。
いや、モヤモヤ?
この弁当何か変なもん入ってたんじゃねぇの?

「アキちゃんは?」
「とりあえず料理できる子。もうコンビニ弁当やだ」

これ、去年の今ごろも言った気がする。



うちに帰ると加賀見がソファーで横になってテレビを見ていた。

「ただいまー」

声をかけると、テレビに視線を預けたまま、ポンポンとソファーを叩いた。

部屋着に着替えて、加賀見が叩いたとこに座った。

んー、腹のムカムカが収まらない。
なんなんだろう、これ。
煙草を吸ってみても、直る気配はない。
え、ほんと何なんだ?

加賀見を見ると相変わらずテレビを見ている。
スポーツニュースを見ているみたいだった。
うーん、横顔もかっこいい。
ほんとむかつくな。

加賀見を見ていると、俺に反応してくれないのが悔しくて、ぎゅうと抱きついてみた。
横になってる加賀見に抱きついてるから、珍しく、俺が上。

加賀見はテレビを見たまま俺の頭に手を伸ばした。
頭にポンと大きな手が乗り、その手つきが妙に慣れているような気がした。
いつもなら、そんなの気にならないのに。
ムカムカがより一層ひどくなり苦しかった。

その手を取り、ちゅっ、と口付けた。

「暁」
「え?…わあっ…!」

いつの間にか加賀見が上になっていた。
ほんとに気づかなかった。
すごい技だな。

「お前、どうしたんだよ」

加賀見の眉間には皺が寄っていた。
あれ?
怒ってる?

「あ…、やだった?ごめ…」

うん、確かに手とはいえ俺からキスされんのいやかもな。
俺が加賀見なら気持ち悪いだろうし。

加賀見におでこをベチッと叩かれた。

「痛い…」

手でおでこを擦る。

「んなこと言ってねぇだろ」

そうなのか?

「お前さっきから変だろ」
「なんか胃がムカムカ…」
「は…?それと、俺にくっついてくるのと何の関係あんだよ」

…確かに。
普通、腹の調子悪かったらトイレだよな。
なぜ加賀見にくっつかなきゃならねぇんだ。


「お前、それいつからだ?」
「うー…昼休み。加賀見の好きなタイプ話してたとき辺りから…」
「暁」
「ん?」

ムカムカ。
ムカムカ。
増えてく。





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