「俺、便所」
「あ、俺もー!暁ちゃん!みかんちゃんと連れション行ってきます!」
「いちいち言わなくていいだろ」
「んー行ってらっしゃい」
「龍!暁ちゃんに変なことすんなよー!」
「しねえよ、たぶん」
「たぶんってなんだ!すんなよ!?ほんとにすんなよ!?アキちゃん!龍に変なことされたら叫ぶんだよ?」
「うん」
「てめえも当然のように返事すんじゃねえ」
「いてっ」
ベシッて叩かれた。
いてえ。
お前ちゃんと手加減しろ。
いや、これでもしてんのか?
三上と井上は飯食う前に、飯置いて一緒にトイレに行った。
加賀見がこっちをじっと見てくる。
…なんだ。
かっこいいなんて絶対言ってやんねえぞ。
俺の手には期間限定のチョコレート。
三上と井上が帰ってきたら飯食うから帰ってくるまでデザート先に食べることにした。
これか?これが狙いか?
「何だよ?これはあげないからな!」
隠すために加賀見に背を向ける。
俺の大事なチョコレート。
鬼の手からちゃんと自分で守る。
守備を固めながら、チョコを口に放り込む。
はうー。
とろけたー!
舌に乗せただけで溶けたー!
うまうまうまい!
一人で満足しているといきなり体が宙に浮いた。
「わぁあ!?」
振り向くと加賀見が俺の脇の下に手を入れ持ち上げていた。
なんだこのガキみたいな扱いは!
暴れようとすると、胡座をかいた加賀見の膝に着地した。
…何だこれ。
「っ、なんで俺がこんなバカップルみたいなことしなきゃなんねえんだよ!」
「あー…キャンキャンうっせえよ」
加賀見は耳を押さえてそうほざきやがった。
いや、誰のせいだと思ってんだよ!
下りようとするとガッチリホールドされていて逃げられない。
屋上をキョロキョロ見渡すと、珍しく他には誰もいなかった。
「放せよ!」
「うるせえな。誰もいねえんだからいいだろ」
「人がいるとかいないとかじゃなくて俺はやなんだよ!」
「俺にはお前が嫌だろうと無かろうと関係ねえんだよ」
「何おう!?」
誰かここにいる王様を退治してくれ。
俺じゃ対処しききれねえよ。
顔近い。
近すぎる。
何か心臓うるせえし。
俺は心臓だけ初々しいな、このやろー。
気をまぎらわすためにチョコを食べる。
うまい。お前だけが俺の味方だな。
加賀見には絶対やらん。
「ひ、」
気づかない間にシャツのボタンが2つ外されていて、ちうと鎖骨の辺りを吸われた。
「ん、おま、絶対見えるとこにつけんなよ!」
「どうすっかなー」
「てめ、キスマークつけて職員室入らなきゃいけない人間の気持ち考えろ!」
すると、加賀見はにやっと笑った。
「それ、おもしろそうだな」
あー!俺のばか!
こいつはこういう奴だった!
「ちょ、やめろ!まじで!」
喉仏の下辺りに口付けられる。
「んっ」
ばかやめろ!
肩を押しても動かない。
くそっ!
すると、予想していた刺激は現れず、そのまま唇が離れた。
あれ?
そのあと、チッと舌打ちが聞こえた。
さらに開けられた俺のボタンを締めてくれる。
えぇ?なに?
王様も今までの行いを改めたのか?
ついに?
ガチャて勢いよくドアが開いた。
ん?
「ぎゃあ゛あ゛あああああっ!!」
「!?」
井上が帰ってきたと思ったらいきなり叫びだした。
ビックリして加賀見の膝の上で一瞬浮いた気がした。
それに引き換え加賀見は予想できていたのか特に驚いた様子もなく少し不機嫌にしている程度だ。
「龍!お前アキちゃんになにしてんだああ!」
「井上助けてくれ」
「はい!お姫様!あなたのナイトが今助けに行きます!」
姫って誰のことだ。