「う゛ー…腹減った」

俺はテレビから声の方に視線を移した。
暁は立ち上がるとのろのろ冷蔵庫に向かう。
まだ眠いのか足は覚束ない。
ジャージの裾が長く、ずるずる引きずっている。お前脚短いな。
それより、それ危ねえだろ。転ぶんじゃねえの。
口には出さずに言うと、

「え、ぎゃいっ…!?」

…案の定、裾に躓き、転んだ。
幸いなのは転んだ先がソファーだったことか。
ソファーに寝転んだついでに、うとうとし始めた馬鹿の首根っこを掴むと、ぐひっと苦しそうな声が聞こえた。

「まだ寝んのか」
「起きま、す…!」

だから離してくださいとでも言いたげだ。
手を離してやると少し浮いた身体がソファーに落ちた。

「くそぅ、襟伸びんだろー」

学習せずにまた裾をずるずる引きずりながら冷蔵庫に向かった。
テレビに視線を戻すと、冷蔵庫の開く音が聞こえる。

「あ、この牛乳賞味期限やべえ。お前飲めよ」

差し出された牛乳パックを受け取り、見てみると、確かに賞味期限が明日までだった。

「お前が飲めよ」

牛乳を返すと、暁はうーんと唸り、牛乳を冷蔵庫に戻した。
飲まねえのかよ。

「牛乳って甘くねえんだよなー…」

飲めよ。目で言うと、珍しく解ったのか、そう答えた。
甘くないと飲まないってどういうことだ。
そういえば、お前子供舌だったな。
ココア……の粉はねえな。

とりあえず冷蔵庫から再び牛乳を取り出す。
牛乳を鍋にかけると、それを見た暁はうえ、と嫌そうな声を出し、冷蔵庫からケーキを出してソファーに戻っていった。
俺からしてみたら朝からあんなもの食う奴の気が知れない。


そろそろいいか。
火を止め、マグカップに牛乳を移し、スプーンを出す。
そのスプーンで嫌がらせだと言われても何ら否定できない大量の砂糖をマグカップに入れた。
それを暁に差し出す。

ほぼ食べ終わっていたケーキをテーブルに置くと、渋々と言った感じで受け取った。
飲まないって言ってんのに。
ぶつぶつ呟いていたが、無視した。

暁は両手でマグカップを持ち、ふーふーと息をかけて冷ましている。
いらないと言いつつも飲むらしい。
恐る恐る啜ると、甘さに驚いたのか、目を見開き、すぐにこくん、と喉が鳴らした。

「う、まっ…!」

…は?

「うま!いつもの牛乳じゃねえ!」
「……」
「魔法か!?魔法なのか!?お前魔法使いか!?」
「……」

味音痴か。可哀想な奴。
はふはふ熱さと戦いながら牛乳を飲んでいる暁に哀れみの視線を送る。

「嫌いなのに何で牛乳買ったんだよ?」
「別に嫌いじゃねえよ。それにこれは俺が買ったんじゃなくて陸が置いてったんだよ」

牛乳は体にいいんだってよ。
と暢気に言ってる馬鹿は、その名前を出すと俺の機嫌が悪くなることを知らない。

「え、ちょ、…!」

腹いせに牛乳を取り上げると、ぎゃあぎゃあ騒ぐ。
うるせえ。

「なんだよ、飲まねえんだろ?」

唇を結び、どうしたら返してもらえるか考えているようだ。

暁の肩を抱き、身体を引き寄せる。
何をされるんだと、怯えた表情を見せる暁の耳に口を寄せる。

「欲しいなら、それなりの態度があるだろ」

な?、と念を押すと、暁の肩がビクリと揺れた。





おわり
―――――
追求の方が好評だったので調子乗りました
暁ちゃんは甘い=美味しいです(^q^)






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