加賀見龍の追求


「おい」
「…なに」
「見えねえんだけど」
「うっせえ黙れ」

俺の膝の上を陣取り、無駄にくっついて抱きついてくる目の前の野郎にそう声をかけると、悪態をつきながらも、膝の上から退けて横に座った。
腕は俺に回したまま。

視界の下半分を遮るものが無くなった俺はテレビに視線を向け、ふいに暁を見た。
こいつには稀にこういうことがあった。
普段俺が接触しようとすると赤くなってやだやだ言うくせに、いきなり何の前触れもなく、ベッタリくっついてくる。
普段も力じゃ俺の方が上だから、ぶつぶつ言いながらも最終的には大人しくなるが。

「……」
「…い、やか?」
「あ?」
「だ、だから…俺が………くっついてんの…」
「別に」

照れているのか語尾はこの距離じゃないと聞こえないくらい小さい。
照れるくらいならくっつかなきゃいいだろ。
嫌じゃねえから特に咎めもしないけど、何なんだ。

「おい」
「…なんだよ」
「それはこっちの台詞だ」

この状況説明しろ。
暁は俺の胸に顔を埋めたまま、顔を上げようとはしない。

「……別に」
「別にじゃねえだろ。めんどくせえから早く言え」

そう言うと顔を少し離して俺を見上げた。
睨んでくるが、上目遣いじゃなんの効果もない。
あ、上目遣い関係なく効果ねえけど。
睨んでくるだけで、何も言おうとしないのを確認すると、俺から話すことに決めた。
無理矢理割らせんのも悪くねえけどな。

「お前がさ、くっついてくんのって俺が散々女に付きまとわれた後な気がすんのは気のせいか?」

そう言うとビクッと身体が跳ね、俺の胸に再び顔を埋め、頭を横に振った。

女が寄ってくんのは、まあいいが、たまにしつこい奴がいる。
勝手に話しかけてきて腕を絡めて、今日暇?とかなんとか。
暇だろうと暇じゃなかろうと俺がお前に遣う時間はねえよ。

まあ毎回そんな奴に絡まれるたび、暁がが遭遇してる訳じゃねえだろうが、そういうめんどくさいことがあった後に暁がそうなることが多い気がした。

今日もそうだ。
ベッタベタくっついてくる鬱陶しい女がいた。
俺が気づかなかっただけで、暁はそれをどこかで見ていたのかもしれない。

「おっ…!お前…、の気のせい…だ」

図星か。
お前本当に嘘下手だな。
こっちは楽でいいけど。
俺の疑念は確信に変わった。

そうかよ、へえ。
面白いな、お前。

「ふーん」

気のない返事をして、立ち上がる。

今度は腰の辺りに抱きついてくるので脇腹を軽く蹴った。
うっ、と苦しそうな声が聞こえる。
鳩尾狙わなかっただけ感謝しろ。

「便所だよ。邪魔だ、退け」
「うぅ…」

渋々と言った感じで腕が離れて便所に向かった。

今日はどんな風に苛めてやろうか。

ニヤリと無意識に笑ったことを、後ろで項垂れているあいつは知らない。





おわり

―――――
乙女暁ちゃんw
龍くん目線が久しぶりに書きたくなった><
今更新しないとボツりそうだったので割り込み更新!






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