みかん


「もしもし?」

屋上で飯食ってると井上のケータイが鳴った。
電話越しにいくつか言葉を交わすと井上はケータイを閉じた。

「ごめん、アキちゃん、みかんちゃん!俺行かなきゃ!」
「おー」
「後でなー」

井上は屋上を出ていく。
龍は学校来てないし、暁と二人きりだ。

「なあ三上ー」
「なんだよー」

暁は食後のデザートを食べている。
暁はチョコプリンをスプーンで掬い、パクッと口に入れて幸せそうに微笑んだ。

「井上って彼女とかいねえの?」

俺に視線を向ける。

「や、いないと思うけど。なんで?」
「だってさ、あいつ明るくて話しやすいし優しいじゃん。いてもおかしくないのになって」

いや、…あれ?
これは…。

「井上は好きな奴いんだよ」

試しに言ってみる。
すると暁はへえぇーと感心したように驚いた。

「一途なんだなー。井上に想われてる奴は幸せだな!」
「え、気づいてねえの!?」
「何が?」

ええぇぇー!
え、まじで?
井上が好きなの自分だって気づいてねえの?

他にないくらいストレートにアピールしてんのに!?
毎日タコできるくらい暁のこと好きだ好きだって言ってるのに?
うわ、井上さすがにかわいそう。
不憫だ。
あれで気づかないなら、これ以上どうすれば通じるんだ。

…すげえな。
暁ってすげえな。
そう想いを馳せながら暁をぼーっと見ていると、勘違いしたらしく

「しょうがねえな。一口だけだぞ」

って言いながらスプーンでプリンを掬い、俺の前に差し出した。
あーんだ。
俺も甘いもの好きだし、暁のあーんを断るわけにはいかない。
口に含むと、

「うまっ…」

勝手に口から出た。
だろー!?と言ってプリンを語る暁は水を与えた魚みたいに生き生きしてる。

「暁、俺結構本気で暁のこと好きかも」
「は、え?」

チョコプリンのいいところを語る暁を遮り伝えると、一瞬きょとんとし、顔が赤くなっていく。

「なあ、暁は?」
「う、るさい!いきなり何だよ!黙れ!」

照れているのか、俺がいる方と逆を向き、小さくなった。

「へー、暁は俺のこときらいなんだな」

いつもならそこで抱きついたりするが今日は突き放してみた。
暁と逆方向を向く。

「あ、う、……嫌いじゃ、ないぞ?」

少しすると後ろから申し訳なさそうに呟いてきた。
今日はもう少し頑張ってみる。

「嫌いじゃない?」
「あ、や、え、と…うー…おれ、も、好きだ」

ごにょごにょ暁が言う。
ああ、きっと俺の好きの意味をわかってないんだろうなあ。
若干呆れたが、まあ、かわいいからいっか。

苛めすぎたかと思い、暁の方を見て、頭を撫でてやると、暁はにこにこした。
暁がにこにこするのは珍しい。
かわいい。

そして何を思ったのか暁も俺の頭を撫でてきた。
バカップルか。




放課後、屋上でしばらく寝た俺は人のいない廊下を歩いていた。


「みかんちゃん」

は?
誰だ?

俺をそう呼ぶのは名付け親の井上だけだ。
俺の髪がオレンジなのと苗字の三上をもじっているらしい。
何度嫌がっても、その呼び方を変えようとはしない。
おれ自身はあんまりすきじゃないが、名付け親は気に入っているらしい。


振り返ると、俺と身長が同じくらいの細い、なよなよした男が立っていた。
俺を呼んだのはこいつか?

「何だよ。つーかあんた誰?あとその呼び方やめろ」
「みかんちゃんとヤりたいんだけど」
「は…?」







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -