みかん


起きたら12時前だった。
いつものことだ。

ケータイからアドレス帳を開き、電話をかける。
プルルルルルル、と三回なったところで声が聞こえた。

『もしもし』
「あ、暁?」
『ん、三上?』
「うん。今起きた」
『まじかよ。羨ましいー。俺も学生戻りてえ』
「暁なら制服着て学校通ってもバレねえよ」
『ふざけんなボケ』

いや、結構マジなんだけど。

あ、暁の制服姿見てみたいかも。
学ランも似合いそうだけど、ブレザーもイケるな。
てかセーラー着ろ。
セーラー。

『あんな、井上が三上は今日の5時間目出ないと単位やばいって言ってたぞ』
「じゃあ、それに間に合わせて行くわ」
『んー待ってる』

そこで切れた。

待ってる、って。
いちいちかわいいな。

学校には行くようになったけど、遅刻は直らない。
そしたら暁が心配するから電話入れろって言うから、電話してる。

暁の授業は出るようにしてるけど。
暁の授業ある日は井上から鬼のように電話鳴るから、一回も休んでない。
あいつほんと暁のことになると人格変わるな。


電車に乗ると、席はガラガラだった。
この時間ラッシュじゃないから痴漢に合わない。
あー快適。

って思ったら向かえに座ってた二十歳過ぎくらいの男と目が合った。
男の顔がニヤニヤする。
きも。

日常茶飯事だから気にしないようにしてると、男が移動して、俺のとなりに座った。

「きっ君っ、タチだろ、ならっ、ならっ俺とっ…!」

鼻息が荒く、言葉の節々にハアハア息遣いが聞こえる。
シカトすると、俺の手を取り、自分の尻に押し付けようとし、股間をそろりと撫でた。

飲み物しか入ってない鞄を振り上げ、そいつに叩きつける。

するとそいつが、う゛っと痛そうな声を上げ、その声で周りの人間もこっちを見てくる。

「鏡見てから言えよ、そういうのは」

男の顔が怒りからか、真っ赤に染まる。

電車が停まり、ちょうど降りる駅で、俺は電車を出た。
痴漢で駅員に付き出さないだけ感謝しろよ。



学校着いたら、数学準備室に向かった。

暁は職員室よりこっちにいる方が多い。
勝手にちっちゃい冷蔵庫置いて、チョコとか入れてる。

この前、一口チョコくれて、秘密だぞって言われた。


「暁ー来たぞー」
「んーおはよー」
「あれ?今日ここで食ってんの?」

暁は弁当食べてた。
弁当って言ってもコンビニのだけど。

いつもは井上に引っ張られて、屋上で食べてる。

「三上来ると思ってこっちにした」

俺は近くの椅子に座って、暁が弁当食べてるの見てた。
弁当を食べ終わったらしく、こっちに暁が視線を向ける。

かっ、と目が見開かれると、あー!と俺に向かって叫んだ。
はっ?なに?

じーっと俺の口を見て

「もったいない…」

と少し泣きそうな声で呟いた。
ああ、あれか。

「似合うだろ?」
「似合うけど…綺麗な顔にもったいない…」

俺は昨日、口にピアス開けた。
耳も軟骨も飽きたし。

「つーかそれ、ちゅーしにくいんじゃねえの?」
「おー暁試そうぜー」

口を尖らせ、んーと近付くと頭をベシッと叩かれた。
痛くないけど。

「あほか。何で男同士で」
「俺、暁なら全然したい」
「ぅえ!?」
「でも…暁はやなんだもんな…」

俯き、傷ついたように振る舞う。
もちろん傷ついてなどいない。
暁が男に興味ないのは知ってるし。

「えっ、や、三上がやだっていうんじゃ…」

暁は俺を傷つけたんだと勘違いして、ごめんなと繰り返す。
いや、俺こそ騙してごめん。
無いと思っていた良心が痛む。







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