みかん
俺の名前は三上比呂。
俺からは、フェロモンが出ているらしい。
昔はそれを自覚していなかった。
だから、よく変質者の標的になった。
よく話しかけられて、どこかへ連れて行かれそうになる。
今ならわかるが昔は何で気持ち悪いおっさんが寄ってくんのかわかんなかった。
通学の痴漢は当たり前だし、去年の担任はセクハラがとにかく酷かった。
ケツ触ってくるし、身体中舐めるように見てくるし、涎出てるし。
ムカついて蹴ろうが殴ろうが俺のケツ追いかけてくる。
気持ち悪い。
いっぺん死ね。
そしたら学校行くのがめんどうになった。
暇になった俺は、このやっかいだったフェロモンを使ったある趣味を見つけた。
元々顔は綺麗な方らしく、さらにフェロモンがどうのこうので、女には不自由しなかった。
女に飽きた俺は男に目をつけた。
適当にノンケの男に近づいて、とにかくフェロモン撒き散らしながら、口説く。
口説くって言ってもあからさまにじゃなくて、男同士の会話としても不自然じゃない、深読みすればわかる程度。
そこからどんどん大胆な行動へと移す。
俺は元々男も女もイケるし、何も苦じゃない。
そして男が俺に恋する過程は超おもしろかった。
男同士なのに、なんで?って葛藤を間近で感じて笑い出したくなった。
最後にそいつを自分のご褒美に抱いた。
男同士のセックスは思ったよりも良くて、ハマった。
男のくせにあんあん鳴いちゃって、そんな自分が信じられないけど、でも気持ち良くて流されちゃう男たちを見るのは最高。
俺は、さらに趣味への時間を増やした。
もちろん女も寄ってくるから抱いたし、結構充実してた。
3年になって担任が変わったから、学校に来いって井上に言われて行ってみた。
どんな担任か気になって職員室を覗くと、俺と年変わんねぇじゃねぇのって男が担任だった。
北出暁って言うらしい。
顔もタイプだし、なんとなく気に入った俺は学校に通うことにした。
でも暁は恐ろしく鈍かった。
俺のフェロモンは感じ取ってはいるらしい。
でも効かない。
この前暁に
「三上ってほんと王子様だな」
って言われた。
なーにかわいいこと言っちゃってんだよ。
じゃあ暁は姫だなって返したら、意味がわからないと言われた。
通じない。
ボディタッチも慣れているらしく、抱きつこうが、頬にキスしようが動じない。
通じない。
本気で口説けばどうにかなったのかもしれないけど、暁の周りにはやっかいな奴等がいた。
龍と井上。
両方友達だけど、龍は珍しく執着してる。
あんだけ来るもの拒まず去るもの追わず(俺も人のこと言えないけど)だったのに、あーんな熱心に暁のこと苛めちゃって、世も末だね。
井上なんかほんと怖いよ。
暁に何かあったら人でも殺す勢いだからね。
どんなことしてるのかは知らないけど、結構やばいことしてるっぽい。
何がそうさせるのかは知らないけど。
その二人のせいで王子な俺と姫な暁がラブラブになることは、この先無いらしい。
それでもかわいい暁を拝みたくて、学校には行く。
俺って実は健気かも。
そのおかげで、趣味の幅が学校にも広がった。
一年から三年まで、男も女もみーんな俺の趣味の対象。
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