みかん


「花岡ってやつになんかされたのか?」

俺の雰囲気から読み取ったんだろう。
龍が聞いてくる。

「……」

言えるわけねえよ。
そいつに昨日、掘られたなんて。


「あ、ちょ、みかんちゃん!どこ行くの!?」
「寝る。井上どうもな」

俺は保健室へと足を進めた。

奥歯がカタカタ言う。
だめだ。
あいつのこと思い出したら腸煮えくり返りそうだ。
目の前にいるやつ手当たり次第殴りつけちまいそう。
とりあえず壁を殴って落ち着かせる。
怒りのせいか、痛覚が麻痺していて、拳が少しも痛くない。

「あ」

保健室のまえで暁にバッタリ会った。

「三上どうした?」
「いや、寝ようかと…暁は?」
「俺も寝る……ってあ゛ーー!」

お、なんかデジャヴだ。
今日は何だ?

「おっまっえっ、ピアスどころか口切ってんじゃねーか!」
「あ、ああ……自分で切った」

昨日ので切った唇の傷だ。
朝、鏡で見ると、穴が開き、黒いかさぶたになっていた。

「歯で?」
「ああ」
「もったいねー!気を付けろよ?」

思い出したら暁の前なのにイライラする。
あいつのせいだ。
全部。
抑えろ、俺。

「暁がキスしてくれたら治んだけどなー?」
「…むしろ悪化すんぞ」

一緒に中に入る。
ちょうどよく保健医はいない。

「暁って仕事中なんじゃねえの?寝てていいのか?」
「うっせえな。見つかんなきゃいいんだよ……あ」
「あ?」

見るとベッドは一つしか残っていない。
他は使われている。

「三上にやるよ。俺戻るわ」
「や、暁使えよ」

めんどくせえし、もう帰るかな。

「んー…じゃ、半分にすっか」

え?
暁は俺の手を引き、ベットに寄って、カーテンを閉めた。
靴を脱ぎ、ベッドに横になる。
片方に寄って。

「?…寝ないのか?」
「あ、寝る寝る」

ベッド、暁、上目使い。
下半身直撃だ。

あー無防備すぎる。
俺と一緒にベッドに入るなんて。
暁相手じゃなかったら完全に誘ってるんだと思うぞ。

俺もベッドに横になり、暁の腰に腕を回して引き寄せた。

「えっ、な、なに?」

上から掛け布団をかけてやる。

「暁寝相悪そうじゃん。落ちないように」
「うるせ。…確かに悪いけど」

暁の顔を俺の胸に埋めさせる。
あー何か暁と一緒にいたら少し落ち着いた。
暁からマイナスイオン出てるな。

「なんか三上動悸速くないか?ほんとは具合悪いんじゃねえの?」

大丈夫か?と心配そうに見つめてくるのがかわいい。

「暁といるからだよ」
「…?…ふーん?」

絶対わかってねえな。

「なあ、暁」
「ん?」
「どんな殺し方が一番苦しいと思う?」
「は!?……うーん、なんとなく窒息死は苦しそうなイメージだな。いや、腹刺されても痛いか。…こういうの、加賀見のが詳しいんじゃね?」
「そうだな…」

あいつ拷問みたいの好きだもんな。
後で聞いてみっかな。

「何でいきなりそんなこと聞くんだよ?」
「え?や…ちょっと殺したい奴が…」
「……俺!?」
「なんでだよ!こんなかわいい暁を殺すわけねえだろ?」
「かわいくねーよ!からかうな!ばか!」

暁はポカポカ肩を叩いてきた。
それもピタリと止み、少し真面目な表情で見上げてくる。

「じゃあ誰だよ?」

暁が少し動き、顔が近づいた。

「んー…まあ寝ようぜ」
「は!?ちょっ、へぶっ!」

暁の顔を肩に押し付け、背中をリズム良く優しく叩く。

「三上!」
「はい、おやすみー」

一方的に押し切ると、しばらく暴れていたが、頭も撫でてやると諦めたのかおとなしくなり、さらに少しすると寝息が聞こえてきた。







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