龍の鬚を蟻が狙う


目が覚めるとよく知ってる場所にいた。
意識がだんだん戻ってくる。

「車ん…中…?」

やっぱりだ。
俺の車の中だ。
なんで?

「あ、勝手に鍵使ったからな」

声に驚いて左を見ると一番会いたくない奴がいた。
悪魔だ。
魔王だ。

それより、なに勝手に助手席座ってんだよ。

「おまっ…っ!…ぃっつー…」

胸ぐら掴もうとして上体を起こそうとしたら、腰にひどい痛みが走った。
手で腰を擦るが気休めにしかならない。

「最悪だ…」

それがあれは夢じゃないと証明していた。
何があったのか、酷鮮明に、覚えてる。

ただ犯されるだけではなく、俺も確かに感じていた。
加賀見に突っ込まれ射精した。
顔から火が出そうだ。

ありえないありえない。
忘れろ、俺。
あれは夢だ。
悪夢だ。

「もっかいしとくか?」
「するわけねーだろ!くそ野郎」

加賀見は楽しそうにクックックと喉を鳴らして笑っていた。
そんな顔も色っぽい。
ああ、もう、なんでこんなやつがかっこいいんだ。
世の中、不公平だ。

「でも、暁だって悪いだろ」
「あぁ?なにが」
「数学教室でヤってただろ。暁が生徒抱くんなら、生徒の俺だって暁抱いたっていーだろ?」

待て。
待て待て待て。
色々おかしいが一番おかしいとこからいこう。

「俺数学教室行ってねえし」
「は?嘘ついてんじゃねーよ」

そう言いながら、笑みを消し、俺の髪を掴んで無理矢理顔を近づけた。

髪抜ける。
痛い。

「嘘じゃねーよ。職員室で明日の小テスト作ってたし。職員室に他の先生もいたから、聞いてみろよ」

すると、加賀見は俺の目をじっと見た。
加賀見の目は疑ってると言うよりは確認しているみたいだった。
嘘は言ってないのに加賀見の射抜くような目に見つめられると何だか直視出来ない。
心臓が騒がしい。
なんだこれ。

舌打ちが聞こえた気がした。
こっちがしたいくらいだ。

目は見ないようにしたけど顔が近くて視界には加賀見の顔しかない。
しょうがないから目以外のパーツを見ていた。

鼻筋はきれいに通っていて唇は薄め。
色はきれいなピンク色。
直視は出来ないが目は二重の切れ長で目付きは良くないが目力があって吸い込まれそうだ。

芸能人顔負けじゃないか。
綺麗、とか美形、とかこいつのためにある言葉じゃないかと思う。

こんな顔の整った奴が目の前にいるなんて何だか現実離れしている。

背も高かったし180はあるだろうな。
俺も小さくはないのに身長差あったしな。

悔しいが羨ましい。


加賀見の色気のせいか、ぽーっと見とれてた。
うっとりしてしまう。

女の子の気持ちがわかった気がした。
こんなのが近くにいたら、抱かれたい、とか思うのかもしれない。
俺も女に生まれて、こんなのが近くにいたら好きになってたかもな。


もちろん俺は男なので、ごめんだが。







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