龍の鬚を蟻が狙う


何度も謝まると、そのかいあってか、やめてくれた。

5限目終了のチャイムが聞こえる。

「あ、俺行かなきゃ」
「おー行くぞ」
「えっ、ちょおまっ」

加賀見は俺の肩を抱き、トイレの個室を出た。

「ままままっ…!」
「あ?」
「ローター出してねえだろ!」
「だからそのまま授業やれよ」

…はあ!?
ケツにローター入れたまま授業やれって!?
ばっかじゃねえの!

「ふっ、ふざけんなっ!」

加賀見の腕をはらい、個室に戻ってローターを出そうとした俺の腕をつかみ、さっきより強く肩を抱く。
ケツを加賀見はぐっと握った。

「ぅんっ…!?」
「なあ、このまま廊下で犯してやろうか。みんなに見せてやろうぜ。お前のえっろい姿」

加賀見の唇が耳に触れ、囁くように言う。
息が耳にかかり体が逃げようとするが、加賀見がそれを許さない。

どうやら加賀見はまだ全然気が済んでいないらしい。
あれだけ嫌がらせしといてまだ足んねえのか。

「わかった!…やる、から…」

加賀見の嫌がらせに頭痛を起こしそうだが、ここはただの男子トイレだ。
もうすぐ男子生徒がやって来るだろう。
俺がこんなとこにいたらおかしい。

加賀見も俺の言葉に納得したのか手を放した。


俺は急いで職員室に向かう。
急ぎたいのだが、体を大きく動かすとローターが動いてしまう。
体をあまり動かさないようにのろのろ歩くしかなかった。

職員室で次の授業に使う小テストとか教科書を持って教室に向かう。

ローターの場所が変わる度、熱い息をしてしまう。
こんなことで授業なんて出来んのか?

教室に入ってすぐチャイムが鳴った。
間に合ってよかった。
授業は俺の担任のクラス。
つまり加賀見のいるクラスだ。

深呼吸をひとつする。

「アキちゃーん!今日みかんちゃんと二人でお昼食べたでしょー!?ずるい!」

井上の声がする。

「飯食っただけだろ」

どこからか笑い声が聞こえる。
とりあえず俺はいつもと変わらないらしい。
よかった。


教科書のページを言い開くよう指示する。
みんな開いたのを確認した時点で、黒板に今日の授業内容を書いた。

ローターのために少しずつしか動けないが、気を付ければ問題ではない。
それにローターがあることに少し体が慣れ、入れられた直後よりは随分違和感が無くなった。


授業時間残り20分になったところで、今日の復習の問題をやってもらう。
みんな黙々とシャープペンシルを走らせている。
ノートに書き込む音しかしない。

俺も解説の途中式が間違っていないか確認したところで、生徒の方を見ると加賀見と目があった。
加賀見が静かに口角を上げた気がした。

ヴヴヴヴッ…!

ローターが小さく振動した。
加賀見がリモコンで操作したんだ。

「っは、…ん」

俯いて、必死に何が起きてるか隠す。
声はぎりぎり我慢できたが、荒い息は我慢できない。
幸い、誰も気づいていないようだ。

細かく息をして、息を整える。

ヴヴヴヴッ…!

静かな教室ではこのバイブ音がひどく大きな音に聞こえ、ハラハラした。

「暁ちゃん、出来た」

計算するのが早い生徒はもう終わったようだ。
そこでピタリとローターが止まった。

「っ、早いな。少し待っててな」

声が震えないように気を付け、出来るだけ自然に返した。
俺、変じゃなかったか?
おかしいとこなかったか?

だいたい終わったところで、黒板に解説を書いた。


次に小テストを配り、やってもらった。
残り10分。
これを集めたら終わりだ。

安心しかけたところで、ローターが暴れた。







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