龍の鬚を蟻が狙う
連れてこられたのはトイレだった。
予鈴が鳴ったからか、誰もいない。
個室に入れられたところで、本鈴も鳴った。
おい、教師の前で当然のようにサボんじゃねえ。
便器と向き合う形で立たされている俺に加賀見は後ろから手を伸ばし、スラックスのジッパーを下げた。
「は!?ちょ、なにしてんだよ!んっ、ひぁっ!」
抵抗しようと加賀見の腕を掴もうとすると、チャックの間から加賀見の手が入り、下着の中に手を入れられ、性器を握られた。
性器を直接触られ、びくりと体が跳ねる。
そのまま性器はチャックの間から出され、外気に晒された。
おしっこをするときの状態だ。
何だこれ?
「離せよ!つーか授業出ろ!」
「うっせえな。てめえは反省しろ」
「…は?」
反省すんのはお前だ。
授業サボって何やってんだ。
ばかじゃねえの。
加賀見がジッパーを掴んだ。
は?え、何して…。
まさか。
そのまさかで、加賀見はそのままジッパーを上げた。
「いぎぃっ…!」
もちろん最後まで上がることはなく、その代わり俺の性器にチャックが食い込んだ。
ビックリしたのと想像を絶する痛さに涙が勝手にぽろぽろ溢れる。
「いた、…んっ…ふぅ…」
血は辛うじて出ていなかったが出ててもおかしくないくらい痛い。
今もじんじん熱を持ったように痛覚を刺激している。
そんな俺を加賀見は笑いながら満足そうに見ていた。
変態ドS鬼畜野郎。
加賀見は俺のベルトを慣れた手つきで外し、パンツも膝まで下げ、後孔に指を当てた。
学校だぞ。
授業中だぞ。
逃げようとした俺の腰を加賀見は引き戻し、抱えた。
「やだっ、ふざけ、んぁっ…」
つぷん、と指が入ってしまう。
「相変わらず狭いな」
「あひっ、ん゛、やめ、…っ…ぁ、ぁくっ…」
加賀見の指が軽く出し入れする。
それ、だめだ。
焦れったいような刺激に下腹部がむずむずする。
立ってられなくなりそうになるが、片手で加賀見に腰を抱かれた。
「ぁんっ、…ふあっ、は」
指は次第に二本になる。
それでも指は出し入れされるだけで、もちろん前立腺なんて触ってくれないし、奥にもいかない。
入り口付近を、撫でるように、出し入れされるだけ。
こんなの続けられたら頭おかしくなる。
「ぬけっ、よっ…ゆびぃっ…っ…」
ダメ元で言うとほんとに抜いてくれた。
言ってみるもんだな。
指が抜かれたとき、安心感と共に、さみしいような、虚しい気持ちになった。
まるで指が入っていないことの方がおかしいような。
こいつのせいだ。
ちくしょう。
息を整えてると、無意識に加賀見の腕を掴んでいることに気づいた。
慌てて手を離すも、加賀見のYシャツはしわくちゃだ。
……俺は謝らないぞ。
加賀見が何に対して不機嫌かは知らないが、これだけ俺に嫌がらせをすれば気も済んだことだろう。
安心しきった俺の後孔に何か硬く冷たいものが当たる。
「ひぅっ…!?」
ななんだ!?
逃げようとしても加賀見に腰はガッチリホールドされている。
当てがわれているものが、くぽん、と入ってしまう。
「ひあっ!?やだっ、抜けっ…!」
「何だかわかるか?」
今度は抜いてくれないらしい。
「しらなっ、…ぬけよっ、あんっ!」
加賀見の腕から抜け出そうと、体を揺すると、中の何かの場所が変わってしまった。
それに少し感じてしまった俺は中のそれをきゅうぅと締め付けてしまう。
締め付ける動きで、それを奥へ奥へと誘ってしまった。
当初より少し奥へ入った。
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