龍の鬚を蟻が狙う


「暁ー来たぞー」
「んー、おはよー」

三上がやっと来た。
今は昼休み。

三上は遅刻常習犯だ。
まあでも去年に比べたら、来るようになっただけ進歩だと思う。

朝いなかったら心配するし、電話しろって言ったらほんとにしてくれてる。


「あれ?今日ここで食ってんの?」

三上が不思議そうに俺のコンビニ弁当を見た。
俺はもうコンビニ弁当飽きた。

「三上来ると思ってこっちにした」

弁当を食べ終わり、三上に視線を向けると

「あー!」

思わず叫んでしまった。
三上の綺麗な唇の下にピアスが着いていた。

三上は俺の声に驚いたように、ビクッと体を跳ねさせた。

じーっと三上の口を見つめる。
あーあ…。

「もったいない…」

そう言うと合点いったような顔をした。

「似合うだろ?」
「似合うけど…綺麗な顔にもったいない…」

似合ってる。
ものすっごい似合ってる。

三上はほんと綺麗な顔をしている。
俺から言わせるとほんと王子様だ。
顔も綺麗だが全身からキラキラオーラが出ているし、体つきも割としっかりしてて、男として羨ましい限りだ。
オレンジ色の髪はキューティクルが眩しい。
俺がブリーチしたときはギッシギシのゴワゴワだったぞ。

だから、ピアスは似合ってはいるがもったいない。
あんな形のいい、綺麗なピンク色の唇の近くに穴が開くなんてもったいない。

「暁は無い方が好き?」
「何が?」
「ピアス」
「うん、好き」
「じゃあ塞ぐから暁が取れよ」
「へ?…わかった」

三上が顔を差し出してきた。
片方は唇に、もう片方の手は口の中にお邪魔した。

うーん。
俺が不器用なのか、なかなか取れない。

苦戦していると、口腔内にある指に、何か濡れた柔らかいものが触れた。
ビックリして、ひっ、と声をあげる。
反射的に手を引っ込めた。

そこで、今のが三上の舌だと知る。
うわあぁ!
何してんだよ!


少し困惑した俺は目の前に三上の顔があることに一拍遅れて気づく。

ニキビなんて知らないだろうきめ細やかな肌が近い。
少し色素の薄い茶色の瞳に俺が写る。

俺の意思とは別に、頬が染まったのがわかる。
顔熱い。
フェロモンってこれか!?
すっげえな。

「な、なに…」
「暁、指じゃなくて口で取れよ」
「は?や、近い…」

鼻同士がぶつかりそうな距離に慌てて肩を押すも、その手を掴まれ、さらに顔が近づいた。

「ほら、早く」

三上のもう片方の手が後頭部に回り、さらに顔が近い。
え、ちょ、なにこれ!?
パニックになった俺は、何をされるのかわからず、怖くてぎゅっと目を瞑った。

「ぐあっ!」

上から三上の苦しそうな声が聞こえた。
それと共に、後頭部の手も消えた。

「お前、何してんだよ」

加賀見の声が聞こえて、目を開けると、三上が加賀見にヘッドロックかけられていた。
顔が離れていることにホッとした。

三上ごめん。
目は大丈夫か?
鏡で毎日あんな綺麗な顔見てるのに、俺の顔あんな至近距離で見たりして、ブサイクに免疫無いだろ。

「えっ、わっ!」

三上に謝ろうとすると加賀見に腕を掴まれ、立たせられると引きずられた。

「三上!授業始まるまではここにいていいけど、チャイム鳴ったら授業出ろよ!」

これだけは言っとかなければ。
お前、次の授業単位やばいんだからな。

三上に見送られながら、加賀見に引きずられ、数学教室を出た。

「ちょ、どこ行くんだよ」

歩いてる途中に予鈴が鳴った。
まあ次、俺授業無いから時間的には大丈夫だが、やりたいこといっぱいある。

どこ行くのか何の用なのか、聞いても無視されるし、ふつうに迷惑だ。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -