龍の鬚を蟻が狙う
俺が止めに入る頃には、新田は顔面は殴られ過ぎて誰かわからない状態だったし、近くに砕けた歯がたくさん落ちていた。
血の痕も転々とある。
新田は気を失ってるのか、なんの反応も示さない。
加賀見は返り血で服が汚れていて、とても普通ではなかったけど、夜中だったから、暗いし、人もいなくて、大丈夫だった。
帰る途中、加賀見は話してくれなかった。
何度か声はかけてみたけど、空気が話しかけるな、と言われているようで俺からは、何も言えない。
数歩後ろを着いていくと、手を握られて手を引かれて歩いた。
いつも冷たい加賀見の手は、今日は温かかった。
家に着き、手を引かれて来たのは洗面所。
鏡を見ると右上の額に少し擦り傷がある。
傷を洗い、加賀見を見上げると、ぐっと抱き締められた。
「い゛ぅっ…!」
俺の反応に加賀見はガバッと体を離す。
一瞬眉に皺を寄せると俺の服を捲ろうとした。
「や、なん、でも、な…」
帰路の途中で加賀見にバレないように自分の腹を見ると、赤紫の痣が出来ていた。
意外と広範囲でなかなか気持ち悪い。
人に見せるもんでもないし、俺は見られたくなかった。
俺のガードをはね除けて、服を捲った。
「ちょっ、まっ…」
加賀見は目を見開き、一瞬止まった。
犯されそうになったのは見られてただろうけど蹴られたところは見られてない。
「あ、…う」
「お前もう家から出るな」
加賀見は怒ってる。
さすがにそれはわかるけど、俺に対してなのか、新田対してなのか、わからなかった。
「え…?や…、………なんで…」
どういう意図で言ってるのかはわからないが、冗談を言ってるんじゃないのはわかる。
笑い飛ばすことも出来ず、思ったまま返すしかない。
加賀見はちっと舌打ちした。
それにビクッと震える。
「あの、かがみ、ぅぐっ!」
背中に壁の感触と、尻には床の感触。
目の前には加賀見。
壁に押し付けられた。
加賀見が腹をなぞる。
「何回蹴られた?」
なぜ蹴られた痕だとわかるのかは謎だ。
「……にかい」
「6…いや5か」
なんでわかるんだ。
「あ、でも、痛くな、い…」
加賀見はなぞっていた手に力を込めた。
「い゛ぎぃっ…!」
加賀見は苛ついたように溜め息をつき、やっぱあいつ殺す、と呟いた。
洒落にならない。
「や、別に、大丈夫…」
「お前、自分が何されそうになったかわかってんのか?」
何か言おうと思ったらキスされた。
加賀見が怖くて必死に舌の侵入を拒む。
でもそんな抵抗は加賀見には無意味で、簡単に舌が入ってきてしまう。
無茶苦茶に咥内を嬲られ、息継ぎ出来ない。
「ん゛んー…!ん…」
苦しい。
涙が勝手に出てきて顎を伝った。
やっと顔が離れて、下着まで脱がされていることに気づく。
乾いた後孔に指が入ってくる。
「いあ゛ぁ゛っ…や、痛い!」
ギチギチとした痛みが走る。
何でこんなことすんだよ。
さらにもう一本入ってこようとする。
「う゛あ゛っ…!やめっ、や、だあ…」
怖い。
痛い。
やだ。
さっき新田にされたことを思い出して、ぎゅっと目を瞑った。
「お前、指より太いもん挿れられそうになったんだろ?」
「ふっ、…や」
「俺が行かなかったら今頃どうなってたかわかるか?」
加賀見は相変わらず怒ってるようで口調に苛立ちを感じる。
目を瞑ってると、聴覚が鋭くなり、それがさらに強く感じた。
「また同じ目に合いたいのか?」
ふるふる横に頭を振る。
「ごめんなさ、」
← →