龍の鬚を蟻が狙う


新田は楽しそうに笑いながら、さらに蹴る。
身体から聞いたことのない音がした。

「ぅぐっ!…っうう゛、…あ゛、う…っ…」

高校のとき、絡まれたら全部、陸が助けてくれてたからなあ。
蹴られるのってこんなに痛いんだ。
そういえば、こういう暴力一方的にされるのはじめてだ。


もう一回。

「ぎぃっ…!っ…うう゛…オエッ…」


その後、二回腹を蹴られた。
舎弟の笑い声が聞こえる。

悔しい。
意思とは別に涙が溜まって溢れた。

少しも体を動かせる気がしない。

新田が俺の髪を持ち、顔を引き上げた。
頭皮の痛さなんて腹の激痛に比べると気にならなくなった。

「いい顔になったなあ?」

そうかよ。
お前がそうしたんだろ。

新田はくくっと笑い、俺の頬をペチペチ叩いた。

触んな。
気持ち悪い。

でも、なんか、どうでもよくなってきた。



「…ヤっちまうか」

は?
何言って…

一瞬何を言われてるのかわからなかった。

色んなことを投げ出そうとしていた頭が一気に冴える。

何がどうなってその結論に達したのかはわからないけど、やばい。

這いつくばって逃げようとすると、頬を踏まれた。
ジャリッとコンクリートが食い込む。

「あ゛あ…」

新田はうつ伏せになってる俺の腰だけ持ち上げた。
この格好、腹が痛い。

「ひっ…」

「怖いか?」

新田は笑うと、俺のズボンを下げ、尻を晒した。
外気に晒され、ぞわっとする。
舎弟共がひゅーと口笛を吹く。

本気だ。
本気で突っ込む気だ。

「こいつ白いっすねー」

見んな、気持ち悪い。

やだ。
どうしよう。


「いいケツしてんなぁ…」

そう言って尻を揉む。

指や視線の気持ち悪さに鳥肌がたった。

「やめ、ろっ!」

力の入らない体に鞭打って動かした。


「こいつケツ振って誘ってますよ?」

そう舎弟に笑われ、かあと恥ずかしくなった。
何をしても無意味だ。


「そんなに急かさなくてもちゃんと挿れてやるよ」

尻に股間を当てられた。
ぐりぐり硬いものが当たる。

一気に現実に戻され体がサアーと青ざめる。
どうしよう。

やだ、俺、こんなやつに。
やだ。
絶対やだ。

「や、…やだ…」

声、出ない。


尻たぶをガバッと開かれる。
何でこんなことに。

後孔の入り口にぐりぐり擦られる。
恐怖と気持ち悪さに後孔がヒクヒク動く。

「なんだよ、お前だって欲しがってんじゃねぇか」

違う。
死ね。
助けて。

「お望み通り、挿れてやる」

解してもないし、濡らしてもないし、絶対裂ける。
加賀見にだってこんなことされたことない。

「う…や」

体が震える。
体のバランスがとれなくて震えているのか、怖くて震えているのか自分でもよくわからなかった。


「い゛ぎぃっ…!」

先っぽが入ってくる。
焼けるみたいに熱くて痛い。
感じたことのない痛みに、拳を作って耐えた。

加賀見、助けて。


「きっついなあ」

当たり前だ。
乾いた粘膜が擦れ、痛みしか生まない。

やだ。
こんな奴に、やだ。

「ぎあっ…うっ、…ひっ…ひ…」

新田は苛ついたように無理矢理捩じ込もうと腰を進めてくる。
痛い痛い痛い。

涙が出てきて、地面にぽたぽた落ちた。
地面にシミが広がっていく。

くそっ…、こんな奴のために泣きたくない。







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