龍の鬚を蟻が狙う


加賀見のご両親は出張が多いらしく、週に二日くらいしか家にいないらしい。
その二日以外はうちに住み込んでる。
俺は帰れと何度も言ったのにシカトされ、さすがにご両親が家にいる日は帰れということで納得した。

生徒と半同棲?
半同居?
最悪だ。
まじ見つかったらどうすんだよ。
って思うけど、そこはさすが加賀見様というか、上手くやってるらしい。
あいつ何者だ。

合鍵まで勝手に作られ、もうここまで来たら、勝手にしてくれって感じだ。

そして今日もうちにいる。


「煙草買ってくる」
「付いてってやろうか?」
「ガキ扱いすんな!」

にやにやする加賀見を他所に、俺はケータイと小銭を掴み、ポケットに入れた。

「何か買ってきてやろうか?」
「あー…ガム」

家を出て、すぐ近くのコンビニに向かう。

たまにチャリンと小銭同士がぶつかる音がする。
財布ごと持ってくると、あるだけ買っちゃうからなー。


「おい」

後ろから声をかけられ、え?と思ったときには頭に衝撃が走った。

ぐにゃりと歪む視界に男三人がうっすらと見えて、両腕を掴まれ、引き摺られた。
頭がはっきりしてきて抵抗しても男二人の力には敵わないし、大声を出す前に、口を手で覆われた。

ただでさえ人通りの無い夜中の、倉庫のような場所の裏に連れて来られた。
電灯も少なくかなり暗い。

体を投げられ、ドサッと地面に転がる。
殴られたせいか、頭が少し痛い。


「なんなんだよ、お前ら」
「おーこの状況でよくそんな口きけるなあ。意外と肝座ってんのか?」

そう言ったのは、学生服を来ていて、高校生なのがわかる。
まあ所謂不良だ。
さっき新田と呼ばれているのが聞こえた。
加賀見と比べるとゴツい。
がっちりしてて、筋肉質っぽい。

あとの俺を引き摺ってきた二人は、こいつの舎弟的な存在なのが態度でわかった。

「お前、いくら持ってる?」
「…今小銭しかねぇよ」

俺の言葉にたいして驚きもせず、へーと言って身体検査みたいに探ってきた。

「ぎあ゛あ゛っ…!」

抵抗しようにも、手を広げた状態で舎弟二人に手首を踏まれて動けなかった。

スボンから俺の小銭を見つけ、ポケットを探る。
ほんとに小銭しか無いとわかると、舌打ちし、小銭を俺の顔に向かって投げつけた。

「い゛っ…」

何枚か顔に当たり、地面に落ちた。
俺に当たらず直接地面に落ちたものは音をたてて転がった。

新田は小銭と一緒に取った俺のケータイを八つ当たりのように、地面に叩きつけた。
ガシャン、と地面に落ちた。

ちっくしょう。
きっと睨むと、新田が寄ってきた。

「なかなかいい顔すんじゃねぇか」

しゃがんで俺の髪を掴み、無理矢理頭を持ち上げ、目線に合わせる。
舎弟二人はもう手首を踏んでなかったけど、痛くて痺れて動かせる状態じゃなかった。

「ハズレだと思ったが暇潰しに遊んでやるよ」

手が髪から離れ、重力に従い、頭部が地面に向かうなか、腹を蹴られた。

「ぐ、あ゛ッ!あ゛あ…!」

背中を丸め、うずくまり、痛みに耐えた。

舎弟二人の下品な笑い声が聞こえる。
新田は再び髪を掴み、俺の顔を上に向けた。

「お前いいなあ。クセになっかも」

喉で笑う声が聞こえたかと思うと、勢いよく地面に額を押し付けられた。

「うあ゛っ…!」

ぐわん、と頭に鈍い衝撃が走り、ガンガンする。

チカチカ、する…。

目の前に星が飛んだ。

そのままグリグリ動かされ、額が冷たいコンクリートに擦れた。
地面は少し赤くなっていて、額が切れたんだとわかる。






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