龍の鬚を蟻が狙う


後処理をした後、Tシャツとスウェットを着ると、加賀見に布団の中に引きずられた。

「……加賀見もか?」

目を見て話すのが恥ずかしくて、加賀見の鎖骨の辺りを見ながら話しかけた。

「何が」
「さっきの話!」
「さっきの話?」
「だ、だから…お、れを…嫌いじゃないって…」

恥ずかしいような心細いような気持ちになって、声が小さくなってく。


「加賀見もか…?」
「…おう」


めちゃめちゃ嫌われてると思ってたから、嬉しい。
…いや、待て、俺。
信用出来るのか?
相手は加賀見だぞ。

「嘘つけ」
「嘘じゃねぇよ」
「だって嫌がらせすんじゃねぇかよ」
「嫌がらせ?」

何のことだ?
という目で見てくる。
白々しいぞ。

「な、泣かせてくるし」
「前にも言っただろ。暁見てると苛めたくなるんだよ」
「…それ、嫌いってことだぞ」
「ちげぇよ」
「違くねぇよ」

加賀見は少し止まった。
相変わらず表情は読めないけど、少し複雑そうな顔をして、何か考えてるみたいだ。

「暁」
「……なに」
「わかれよ」

珍しく言葉に力がない。
釣られて俺まで弱々しくなる。

「何がだよ?」


いつもと違う空気に心拍数が速まる。
心臓の音、加賀見に聞こえそうだ。

全神経が耳に、というか、加賀見に行く。



加賀見が呆れたように、小さく息を吐き出す。

「お前は言わないとわかんねぇな」

何の話だ?

加賀見が俺の耳に口を寄せる。

「暁」
「な、に」

加賀見の声は真剣さに満ちていて、これから大事なこと言うぞ、と言われてるみたいだ。
俺は怖じ気づくというか、逃げ出したくなった。



「好きだ」

「…………」

体がビリビリする。
もう加賀見は俺の腕を掴んでなくて、俺は耳を塞ぐことも逃げることもできるのに、動けなくなってしまった。


「じゃなきゃ、こんなもん付けねぇよ」
「ひぁっ…ちょ、触んな」

加賀見がピアスを弾いた。
ヘッドが揺れ、カチと響いた。


「…………俺、男だぞ」
「うるせぇな。わかってるよ」
「………」

加賀見が耳から顔を離したので見ると、真面目な顔をしていた。
ニヤニヤ顔を予想してた俺は面喰らう。

胸がぎゅうぅってなって言葉が出ない。
俺、ほんと乙女か。


混乱していて、加賀見から顔を反らし、逃げようとすると、加賀見はグッと腕の力を強め、俺の顎を掴んで、視線を合わせた。

「逃がさねぇよ」
「……」

離れたいなんて言ってみろ。
脚の骨折って動けなくしてやる。
俺から離れなくして、犯してやる。
俺から離れられない体にして、俺がいないと生きていけなくする。
誰にも見せねぇし、誰にもやらねぇ。
お前に拒否権はねぇよ。

そう続けた。
ちょっとぶっ飛んでること言われてるのに喜んでる俺はなんなんだ。
俺もぶっ飛んでんのか。
言ってんのが加賀見じゃなかったら、ドン引きだな。


心臓が何かの病気みたいにドックンドックン言ってて、うるさい。
でも嫌な感じはしなくて、むしろ心地よかった。

無償に加賀見に抱きつきたくなった。

加賀見にすきって言われて、俺、嬉しい。






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