龍の鬚を蟻が狙う
「んっ、やだっ…」
手は上へと向かい、胸をそろりと撫で、乳首をカリカリ引っ掻く。
「ぁっ、ぁっ…ゃっだ、んっ…」
「ここ、その辺の女より敏感だよな」
「そ、なことっ、…っ…なっ、あっ…」
「ここだけで、イけるよな?」
「む、り…やっだあっ…!」
刺激しながらも、シャツの前を開け、乳首に噛みつく。
それと一緒にもう片方のピアスを引っ張る。
「ぃ、たあっ…!」
思わず涙が目に溜まる。
加賀見を見上げると口に人指し指と中指を入れられた。
「んぐ…ん、ぅー…」
指が舌に何度も絡んでくる。
加賀見にキスされてるみたいな気分になった。
「口に指突っ込まれて感じてんのか?」
ククッという笑い声が聞こえる。
そんなことないって言いたいけど口に入った指が邪魔する。
「ぅ、う゛ー…んん゛ん」
乳首に加賀見の舌が這う。
腰が勝手に揺れた。
先走りで下着が濡れていくのがわかる。
「んぐっ…ん!んん!」
顔を振って加賀見を呼ぶ。
加賀見は顔を上げ、指を出してくれた。
「何だよ?」
「…っと…スーツ、汚れる…」
「で?」
で?って何だよ。
「どうしてほしいんだよ?」
加賀見が何を言わせたいのかわかって、悔しさで唇を噛んだ。
加賀見は薄く笑って、俺の下唇を親指で撫でる。
「言え」
加賀見の言葉は魔力みたいのを含んでいて、悲しいことに俺は逆らえない。
「ぬ、がし…て…」
「くださいは?」
ふざけんな!って言おうとしたら、また乳首を舐められた。
「ぁあっ…ぬがし、てっ…くださぁっ…」
先手を読まれていて悔しい。
でも、俺にはどうしようもないんだろう。
乳首に歯を立てながらベルトをはずされ、スラックスと下着を下げられる。
脱がしやすいように腰を上げると、やらしい、と言って笑った。
加賀見はほんとに乳首だけでイかすつもりらしく、乳首しか触ってくれなくて、焦れた俺は、性器を刺激しようと脚を擦り合わせようとした。
それを察したように脚を開かれ、そこに加賀見が入る。
「ゃだっ、やだあっ…」
「イけよ」
乳首に舌を絡められたかと思うと、ちゅうぅぅ、と吸い上げられる。
「あっ、あっ、ふっ、あぁ…!」
腰がびくんびくんっと跳ねる。
でも乳首だけでイクなんて、さすがに嫌で、下腹部に力を入れて耐える。
その抵抗を嘲笑うようにピアスをクイクイッと引かれた。
「あ゛あぁあっ…!」
胸がビクッと跳ね、精を吐き出した。
「どうだ?乳首だけでイった感想は」
「っ…」
前に乳首だけでイったのは媚薬のせいだ。
俺、薬無しでもイけんのか。
悲しいような気持ちと恥ずかしい気持ちで泣きたくなった。
涙がポロポロ溢れる。
「ばーか。興奮するだけだって言ってんだろ」
歪む視界に加賀見が写る。
ぐっと唇を噛み、掌を握り、拳を作った。
「も、…お前、やだ…」
何で俺が嫌がることばっかり。
何で俺そんなに嫌われてるんだよ。
手で目を隠しながら泣いてたのに、加賀見にその手を取られる。
「あー、目ぇ腫れんぞ」
親指で俺の目の縁と睫毛を拭った。
俺はその手を振り払う。
「触んなっ…お前っ…んっ…なんか、嫌いだっ…っ…」
加賀見は、ふっと笑った。
「そうだよなあ?嫌いな奴にこんなことされてりゃ、泣きたくもなるわな」
そうだ。
俺はお前にこんなことされて泣いてるんだ。
嫌で泣いてるんだ。
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