龍の鬚を蟻が狙う

北出暁(キタデアキ)は職員会議の後、校長室に来るよう教頭に言われた。
こんなことははじめてだった。

どれだ?どれだ?
何で俺?
やっべぇ。
ついにバレたか?
思い当たることが多すぎて、どれかわからない。

コンコンとノックし、失礼しますと頭を下げ校長室へと入る。
校長の目の前に行き、何の用か尋ねる。
校長と二人で会話するなんて、片手で収まる程度だ。
緊張する。

「北出先生、加賀見龍と三上比呂を知っておられますね?」

は?
誰だよ
そんな奴に知らな…
あ、思い出した。
何か不良だ、不良。
赤とオレンジの。
確か。

「もちろんです」

できる限りの笑顔で応える。
ひきつってる気がするが気にしない。

「うちの学校の問題児だと言うことは知っておられますね?」

まあ、うん。
俺は、見たことないけど。

「加賀見は学校内でも外でも暴力的で私たちの言うことも聞かず手に負えません」

野蛮だな。

「三上は学校には来ていたようなんですが、ほとんど授業には出ておらず、単位はギリギリでした」

知らない。
おれ去年、三年生の教科しか持ってなかったしな。


「本題ですが、その二人が今日から北出先生、あなたの生徒です」

…は?
え、いや担任持つのは知ってたけど、そんな奴らがいるクラス?
しかも二人とも?
まじかよ。

そもそも、担任持ったことない俺が、何で三年の担任なんだよ。
進路とか色々大変だろ。
今更ながら、校長に恨みの念を送った。

適当にあいさつをして校長室を出た。
はあー。
いきなり大変そうだ。



朝のホームルームのために教室に向かう。
少し緊張。
はあー、と大きく深呼吸をした。

ドアを開けて、はい席つけーと声をかけるとみんなすんなり席についた。
いい子たちだ。
少し目頭が熱くなる。

「えー今日から担任の北出暁。名字で呼んでもいーけど、同じ名字の奴がこのクラスにいるから…まあ、いーや。好きに呼んでくれ」

「じゃあアキちゃん!」

そう呼んだ生徒の席を確認し座席表を見て名前を確認する。
井上か。

「先生をつけろ。先生を」
「だってアキちゃんが好きに呼べって言ったんじゃん」
「んー、でもなー」
「てか暁って漢字かっこよくね?」
「しょうがない。好きに呼べ」
「単純ー」
「うっせぇよ」

みんなが、どっ、と笑った。

「はい、じゃあアキちゃんに決定!」

井上がそう言うとみんなが拍手した。
井上、お前良いな。
委員長とかやってみんなをまとめて欲しい。
んで俺に楽させてくれ。



「はいはい。出席とりますよー」

オレンジ頭はいないんだろー…
あれ?
いるじゃん、オレンジ頭。
学校来てないんじゃねぇの?

あれ?
赤い頭もいるじゃん。
今年から真面目になるのか?
まあ、いいや。

とりあえず今のところは上手くやれそうだな。








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