龍の鬚を蟻が狙う



頭が重くて、目が覚めた。

「お前寝過ぎなんだよ」
「んー…?」

ベッドに横になったまま、眠い目を擦り、焦点を合わせようと必死になってると、加賀見に頭を足で踏まれていることに気付いた。
もちろん体重はかけられてないので痛くはないが、ひどくないか?
早く起きろ、と言うように足でぐりぐりされる。
しょうがなく上体を起こす。


「なななんで裸…!」

加賀見はパンツ一丁だった。

すると加賀見はニヤリと笑い、膝の上に俺をのせた。
何か昨日の思い出すから、やだ。

「暁が汚したんだろ?ここで」

そう言って、俺の股間をそろりと撫でる。

「ひぃ…、ちょ!」

確かに汚しましたね、俺の体液で…。

「ふ、服貸すから!」
「お前のじゃ入んねぇよ」
「でかいのあるから!」

生徒の制服体液で汚す教師って……。
新聞に載れそうだ。


加賀見にでかい服を渡すと、

「着せろ」
「…へ?」
「俺に着て欲しいんだろ?着せろ」

王様か、お前。
口には出さず、心の中でツッコんだ。

「頭下向けろ」

召し使いな俺は、何か無償に恥ずかしくなりながらも、着せてやった。
加賀見はそれを楽しそうにしながら、じろじろ見てくるから尚更恥ずかしい。
下はさすがに拒否した。
Tシャツを恥ずかしがりながらも着せた頑張りが通じたのか受理された。

俺が着たらブカブカのをかっこよく着こなしてた。
ちっ。

「暁より似合ってんだろ?」

ニヤニヤしながら聞いてくる。
確かにな。

「…お前に似合わないものなんて無いだろ」

すると加賀見は意表をつかれたような顔をして、珍しく笑った。
ニヤニヤとかじゃなくて、微笑んだ。
といっても、口角が少し上がった程度だが。
ま、眩しい。
直視出来ない。
美形パワー恐るべし。


歩くのも厳しいし、もう少ししたら休むって学校に電話かけなきゃなあ、なんて思っていた。

「加賀見、お前は学校行けよ」
「あ゛ー?」

加賀見はソファーふんぞり返って、煙草スパスパ吸っていた。
どんだけ偉そうなんだ。
まじで前世王族なんじゃねぇの。
俺も煙草…。

腰が痛くて歩けなくて、ソファーまで床を這いつくばって進んだ。
ほふく前進。
人んちでふんぞり返る加賀見と、自分ちで床這いつくばってる俺。
この格差は何だ。

加賀見はそんな俺を見てケラケラ笑いながら

「言やあ、連れてきてやんのに」

って言った。
誰がお前の手など借りるか。
ばか。

やっとソファーに付き、上るのも面倒で、床に座ったまま、ソファーに寄っ掛かった。
煙草くわえて、ライターを取ろうとすると、すっと手が伸びてきて、ライターが取られた。
加賀見だ。
ボッと目の前で火が点いた。
点けてくれんのか?

火に煙草を当てようと顔を少し前に出すと火が離れていく。
え?
さらに近づけようとすると、また離れていく…。
俺、遊ばれてる?

「てめ…」

ライターを取り返そうと、手を伸ばすとその手を掴まれ、口から煙草を取られ、その口に口付けられる。

「ん、…ふ…」

抵抗しようにも、寝起きでフラフラで、何も出来ない。
舌が絡められると、頭が溶けそうな感覚と苦味が広がった。
そういえば、さっきまで、煙草吸ってたな。
俺には吸わせてくれなかったくせに。

加賀見はキスしたまま、ソファーから下り、床に俺を押し倒した。
下が床で固いからか、優しく押し倒されて、ちょっと気遣いにときめいてる俺、死ね。

「お前、口ん中苦ぇよ」
「人のこと言えねぇだろ」
「俺は成人してるから、いんだよ」

お前の年で吸ってたけど。








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