龍の鬚を蟻が狙う



何があったんだ。
いや、全部覚えてる。
悲しいことにバッチリ覚えてる。
何を口走ったかも、何をしたかも、しっかり覚えてる。
何だったんだ。
薬のせいだ。
うん、全ては憎き媚薬のせい。

…あああー!
恥ずかしすぎる。
記憶から消したい。
と言うか、もう死にたい。
あのときの俺、滅びればいい。


気を失っている間に、後処理をしてもらったらしく、ベッドに寝かされていた。
頭を抱えながら、恥ずかしさに悶えていると、加賀見に後ろから抱き締められた。

「ちょっ、なに」
「珍しく素直でかわいかったじゃねぇか?」
「ーーーっ!」

顔がみるみる赤く染まっていくのがわかった。
掘り返さないで頂きたい。
人が必死に忘れる努力してんのに。

「うるさい!」
「なんでだよ?全部気持ちいいんだろ?」

親指で俺の下唇を撫でながら聞いてくる。
顔に熱が集まったように真っ赤になる。

「よくない!しゃべんな!」

耳まで熱くて、絶対赤い。
それを隠すように耳を塞ぎ、寝返りをうって、加賀見から逃げた。
何か言っている加賀見の言葉は聞こえないように、あーあーあーという一人言で回避。
すると、ぱっと手を取られた。

覆い被さっている加賀見を恐る恐る見ると、ちゅっと手の甲にキスされた。
お姫さまにでもするように。

「っ!ちょっ…」

恥ずかしさのあまり手を引っ込めようとすると、逆に絡められた。
ぎゅっと繋がれる。
何なんだよ、これ。

「キスしたいんだろ?」

ニヤニヤ言ってる加賀見の思惑通り、赤くなってる俺は、もう加賀見の手中にいるのかもしれない。

その後も耳、おでこ、鼻、瞼、頬、顎と顔中にキスを降らせる。
ここまでされたら、口にもしてほしい、なんて考えてる自分を殴りたい。

逃げようとすると、向き合う形にされ、もう片方の手も繋がれた。

「お前…こういうことは、女にしろよ…」

すると、比較的、機嫌が良さそうだった加賀見の眉が寄る。
眉間に皺。
悩ましげな顔もかっこいい。

「女にしたって意味ねぇよ」

あ、そんなことしなくても、寄ってくると言う自慢ですか。

「おま…んっ…んむ…」

強引に口付けられ、疲れていて抵抗する気も起きず、されるがままになっていた。
上顎の裏の歯茎をくすぐられると、思わず加賀見の手を握り返してしまう。
ずっとそこばかり弄られる。

「ふぅ、んっ…!は、ん」

さすがに追い出そうと、舌で押そうとすると絡められて背筋がゾクゾクした。

「くる、し…んん…」

酸欠!
握られている手を出来るだけ強く握り、動かす。
力入らなくて、たいして動かせないが。

やっと離してくれた。
肩で息をしていると、首に顔埋められた。

「う、んっ」

ちゅうと吸われ、知ってる感覚。
赤い花が咲いた。

「痕つけんなよ!」
「消えなきゃいいのにな」

俺の言葉は完全無視で、加賀見はキスマークなぞりながら言った。

「腹減った」

加賀見が何を言いたいのかわからなくて、でも聞きたくなかったから、そう言った。
空腹はほんとだ。
晩飯食ってないし。
今何時なんだ。

「コンビニ行く」

だからお前帰れよって目で見た。

「お前、歩けんのか?」

…確かに。

加賀見が上から避けてくれたので、ベッドから足を出し、立ってみた。

「いっ!ぐっ!」

あまりの腰痛に倒れそうになると、加賀見に抱えられ、ベッドに戻された。

「仕方ねぇ。俺が行ってきてやるよ」
「…まじすか」
「目の前にコンビニあったよな?」
「あ、はい」

学校中名前を知らない者はいない不良の加賀見をパシる教師の俺。
申し訳なくなってきて、敬語で話す。


財布から札何枚か渡して、携帯の番号教えた。
着いたら電話する、と言われ、加賀見が出ていくのをベッドから見送った。

そういえば、腰の痛み、明日までに回復すんのか?
…こんなに痛いのに治るわけ無い。
頭まで痛くなりそうなのを我慢し、ケータイが鳴るのを待った。


お菓子とかケーキとかアイスばっか注文する俺に加賀見は電話越しで本気で呆れてるみたいだった。
すきなんだから、しかたないだろ。

「加賀見も何か食うもん買えよ。おごってやっから」

そう言うと、素っ気ない返事が帰ってきた。



加賀見が帰ってきてテーブルまで運んでもらった。
なぜ横抱きなのか聞きながら暴れるとシカトされた。

飯一緒に食べた。
甘いものしか頼まない俺のため、注文してない弁当買ってきてくれた。
どっちが年上か、ちょっとわかんない。


たぶん行けないであろう明日の授業に出す自習課題の内容を考えながら、加賀見が買ってきてくれた弁当をおいしく頂いた。





―――――
もはらです!
とりあえず大スカ期待してくださってた方、ごめんなさい。
どっちか迷ったんですけど、七話もはらにしては、甘く書けたので、あまあまエッチに持ってこう!
と思って媚薬の方向にしました。
でも甘くなったかは謎なんですけど。
気持ちいのに負けちゃう暁ちゃん書くのは楽しかったです。

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