龍の鬚を蟻が狙う


俺はとりあえずピアスのことを考えるのは放棄して、Tシャツとスウェットを着た。
台所まで行き、コップに水を注いで、一気に飲み干す。

ベッドの近くに落ちているスラックスから煙草を取りだし、皺にならないように、背広と一緒にハンガーにかけた。

加賀見はいつの間にか我が物顔で、ソファーに座っていた。
灰皿をベッドサイドのテーブルから取り、加賀見の横に座った。
人一人分開けて。

煙草に火を付ける。
目を瞑り口から一気に煙から出した。

間が悪くなった気がして、テレビでもつけようかと、リモコンに手を伸ばした。

「ぅわっ!」

加賀見にその手を引かれ、俺が加賀見に乗り上げる形になった。

「おま…危ねぇだろ」

加賀見のせいで危険になった煙草は灰皿に押し付け消した。

脚を開いた加賀見の間に俺が入り、加賀見の腰の横に手を置いている。
加賀見の手は未だに俺の手首を掴んだまま。
…近い。
加賀見を見上げると目があった。
感情の読めない顔は相変わらずだが、さっきのような不機嫌なオーラは消えていた。

俺はすぐに目を反らした。
と、いうか、この体勢はなんなんだ。

「放せよ」


俺はそろそろトイレに行った方がいいんじゃないか。
便意はゼロだが、ギリギリで加賀見に捕まり、排泄してるところを見られるくらいなら、トイレに鍵をかけて早めに待機しておいた方がいいに決まってる。

そのときだった。
ずくん、と後孔の奥が疼く。
熱くて、痒い。
意識すればするほど、痒みは強くなっている気がする。
なんだよ、これ。

目を瞑り、やり過ごそうとすると、そこに心臓が移ったように、ドクンドクンと疼いた。
そこから広がるように、全身が火照った気がする。

何が起きたかわからなくて、助けを求めるように、加賀見を見るとニヤニヤしていた。
そうか、と合点した。
あれは浣腸なんかじゃない。

「媚薬…か?」

その声は自分のものとは思えないほど震えていた。

返事のように、そっと脇腹を撫でられると、大袈裟なほど体が跳ねた。
加賀見の手が脇腹からゆっくり上へと上がる。

「う、んっ…あっ…や、やだっ…」

ただ腹撫でられてるだけだろ。
そう言い聞かせても、不安定な体勢に肘がガクガクする。

「んっ、ふぅ…はあっ…」

加賀見に捕まれていない方の手で、俺の手首を掴んでいる手を剥がそうと握った。
腹を撫でる手は胸まで達し、体が熱くて息が荒くなってきた。
加賀見の大きな手を引っ張る。
加賀見は焦らすように避けていた乳首をきゅっと摘まんだ。

「ああっ…!…う゛…」

今までとは比べ物にならない快感に、腕は力が抜け、加賀見に崩れ落ちた。

「かえ、れよ…」

加賀見の胸に顔を押し付ける形になり、胸にあった手が背中に回った。

「帰っていいのか?」
「は…」
「ここ、辛いんじゃねぇの?」

そう言って加賀見はケツの割れ目をスウェットの上からなぞった。

「い、から、帰れよ…」

図星だが、これ以上流されたくない。

こいつが帰った後、どうするかは考えてないけど、一人になってから考える。
周りに人がいると、この疼きをどうにかして欲しくて、すがり付きたくなる。

「責任とってやるよ」
「ちょ、まって…」

加賀見は俺を引き寄せ、跪かせ、Tシャツを捲り上げると、ピアスのある乳首をピアスごと口に含んだ。
穴はまだ傷なので、唾液が触れると少ししみた。

「い゛うっ…んーっ、ふう…」

少しすると、それも慣れ、痛くないどころか、快感に変わる。

「あっん、…やあ…うぅ…」

もう片方の乳首はコロコロ親指の腹で転がされる。
俺は強い快感に思わず加賀見の頭を抱き締めた。

爪で乳首を挟まれ、強く抱き締めてしまい、加賀見の口の位置が変わり、歯が当たった。

「い゛だっ…あんっ…!はぅっ…」

少し顔を離され、加賀見を見る。
いつもと違い見下すのが不思議な気がした。






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