龍の鬚を蟻が狙う


加賀見はポケットをゴソゴソ探り出した。

何だ?
感だが、俺にとって良いことは起こらない気がする。


加賀見は安全ピンを手に持っていた。
ビンゴ。

この機嫌の悪い加賀見に鋭利なものって、ものすごく危険な組み合わせだ。
それに、その安全ピンを何に使うのか予想できてしまった。
その予想は裏切って欲しいが。

加賀見は煙草の箱を出し、そこからライターを出した。
そのライターで安全ピンの針の先端を焼いた。

「なにすんの…?」

一応聞いてみる。

「もうわかってんだろ」
「いや、でもピアス開けたら、流石に怒られる」

ピアスすんな、とか注意してる奴がピアスしてたら、示しがつかない、とか言うやつだ。
たぶん教頭あたりに怒られる。

「大丈夫だ。見えねぇとこにすっからよ」

見えないとこ?
服の下ってことか?
どこだ?
声に出す前に乳首を摘ままれた。

「んっ…」
「ここだ」

…は?
ここってなに?
乳首?

「ふざけんなっ!やめろばか!」

期待は裏切られたみたいだ、ある意味。
悪い方にだが。

加賀見からは逃げられない、って心のどこかでわかっていたけど、抵抗しないわけにはいかなかった。

「たいして痛くねぇよ」
「痛いに決まってんだろ!」
「軟骨開けてたんだろ?なら大丈夫だろ」
「大丈夫ってお前開けたことあんのかよ!」
「あ゛?ある訳ねーだろ」

なんだよそれ!
こいつもうやだ。

加賀見の目は本気で、怖くて泣けてきた。
かっこわるい。
情けない。
そう考えるとまた溢れてくる涙。

はぁ、と呆れたように溜め息が聞こえて、加賀見を見ると、瞼にキスされた。
なにすんだよ。

「お前は俺のもんだろ」

かっこいい。
むかつく。
ムカつくけどかっこいい。
真っ直ぐ俺を見て、珍しく真剣な目をして、そう言う加賀見は堪らなくかっこいい。
顔のつくりは俺と違って、美形だし、人を引き付けると言うか、色っぽいオーラがだだ漏れだ。
俺が女だったら確実に惚れてた。
なんかドキドキするし。


「俺は俺のもんだ」

泣き顔で張り合ったって意味ないことくらいわかってた。
でも、このままじゃ悔しい。
ふんっ、と言うように加賀見から目線を反らした。

「暁」

諭すような響きだった。
従わずにはいられないような、絶対的な何か。

「俺は、ここでも良んだぜ?」

そういって、俺の股間をそろりと撫でた。
やばい。
こいつ本気だ。
本気の目だ。
俺が嫌がったら、本気で俺の性器にピアス開ける気だ。

「どれがいい?乳首か、チンコか、耳噛み千切られるか、だ」

どれもやだ。

「乳首で、いいよな?」

有無を言わせぬ声色だった。
もう加賀見の中では決まっていて、それが俺の中でも認められているような。

俺はゆっくり頷いた。

針が胸に近づく。
俺は見ていられなくて目をギュッと瞑った。

すぐに、つぷっ、とあまり好感の持てない音と、乳首がチクッと痛んだ。
すぐにジンジンした痛みに変わる。
思ってたよりは痛くなかった。

恐る恐る目を開けるとポタポタ涙が出てきた。

「んっ、いたっ、…いっ…」
「…おう」
「こわ、かっ、た…」
「ん」

ピアスくらいで、大の大人が何言ってんだよ。
そう思いながらも涙は止まらない。

加賀見も呆れてることだろう。
加賀見は俺の髪を撫でながら、俺が落ち着くのを待っているようだった。
そんな固くて傷んだ男の髪撫でたって楽しくないだろ。
そう思いながらも、なぜかその手は振り払えなかった。

やっと俺が落ち着きを取り戻すと

「暁、消毒液あるか?」
「あ?…そこの棚の瓶の中」

怪我したときのために風邪薬とかと一緒に入ってる。
加賀見は立ち上がり、瓶の中から消毒液とティッシュを持って、こっちに来た。

加賀見は自分の耳から一つピアスをとり、ティッシュに消毒液を含ませ、それでピアスを拭いた。
衛生的なとこはしっかりしてるんだな、なんて関係ないことを考えてしまう。

そして、安全ピンをスーッと抜いた。
何かが抜けていく感覚はしたが、痛くはなかった。
開けられてから、一度もちゃんと見てなかったが、血も出てないし、加賀見は上手なんだろう。

消毒したピアスを穴の入り口に入れた。

「いっ…!う…」

一瞬痛かったが、その後は引っ掛かることもなく、出口から出てきた。
そこにパチン、とヘッドがつけられた。


加賀見を見ると満足そうな顔をしていてムカついた。
それにさっきの、痛いだの怖いだの言って泣いたのを見られたのを思い出して、恥ずかしくなってきた。
こんなピアス絶対取ってやる。
もちろん穴も塞ぐ。
心の中で小さく決意する。

「取っても良いけどよ、また開けるからな」

こいつほんとにエスパーか。




―――――
もはらです!
陸くん出番少なーい!
もうちょっと出してあげたかった。
番外編でアキちゃんの高校生時代でも書こうかな。
陸くん目線で。
でもエロくならないし、つまんないかなー。
えーっと、もちろん続きます!
ほんとは分けるつもり無かったんですが書いてみると案外長くなりそうだったので。
ごめんなさい。
ピアッシング!
始めて書いたんですが楽しかったです!
また書きたい。
でも内容被りそう。
それに、そんなにアキちゃんを穴だらけにしたくない。
アキちゃんの髪は黒→金髪(陸くんにより)→黒(就職のため)→茶色な感じです。
茶色は黒染めがとれてきたからです(細かい)
ちなみに私も今、黒染めがとれてきて中途半端です(どうでもいい)

感想、質問はclapにお願いします!
一言でも涙が出そうなくらいうれしいです。







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