龍の鬚を蟻が狙う


井上、三上、加賀見の順番に家に送らされた。
時間外勤務か。
俺、働きすぎ。

「ほら、着いたぞ」
「………」

加賀見んちに着いたのに、降りる気配がない。
何だ?
具合悪いのか?

「おい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃねーよ」
「へっ、なに、気持ち悪い?車酔いか?大丈夫?」

心配して加賀見を覗き込むと、数秒俺と目線を合わし、すぐに反らして、ちっと舌打ちした。

「ムカつく」
「…は?」

え、体調悪いんじゃねーの?

「具合悪いんじゃねーのか?」
「だから、ムカつくって言ってんだろ」

なんだそれは。
なんの具合の話だ。
はあーっと安心のような呆れのような溜め息をつく。

「心配すんだろーが」
「あ?」
「いや、うそ。してない」

いや、しただろ、俺。
なぜ嘘つく必要が。

加賀見は相変わらず不機嫌で煙草に火を付けた。
俺は窓を開けて、どうしたものか考えていた。

「俺、帰りてぇんだけど」
「おう、帰りゃーいだろ?」
「じゃ、降りてくんね?」
「断る」
「は?」
「車出せよ。帰んだろ?」
「はあ?」

何言ってんだ?
って続けるつもりだった。
でもそれは、加賀見がちらつかせたケータイに消される。

あ、はい、画像ね。
俺は逆らえません。
でも何でこいつこんな偉そうなんだ。
せめてもの抵抗に睨んでやると、ふっと笑い、頭にポンと手を置かれた。
早く出せ、と目が言っている。
ほんと何様なんだ。

俺は車を出した。
家に着き、車を降り、部屋の鍵を開けると俺より先に、ズカズカ入っていった。
靴を脱いでるだけ、良しとしよう。

俺んちなんか来て、どーすんだよ。
中に入ると、今朝あった洗い物も、テーブルの上のビールの缶も片付けてあった。
じーん、と感動してしまった。
陸、ありがとう。
ほんといい友達持ったな、俺。
あとでメールしとこう。


スーツを脱ぎたくて、背広を脱ぎ、ネクタイを取り、ベッドに投げた。
背後に気配を感じて振り向くと、加賀見にベッドに押し倒された。

「うわあっ!」

一瞬、加賀見がいること忘れてた。

「何すんだよ!んっ…」

キスされたかと思うと、唇を念入りに舐められる。
肩をぐいぐい押すが、やっぱり動かない。

「は、なせっ、よっ…んーっ!」

喋ると当然のように舌が滑り込まれ、口内を動き回る。
貪るように舌が動き回り、唾液も吸いとられる。
変わりに加賀見のが流し込まれて、堪えきれなくて、飲み込んだ。
息が出来なくて苦しくて背中を叩くと離してくれた。

力が入らなくて、離れていく加賀見の唇をぼーっと見ていた。

「エロい顔…」

自分に向けられてる言葉だとは思わず、目線を上げると、口から垂れる唾液をペロリと舐められ、体を反転させられた。

「ちょっ、なにっ…」

ケツだけ上げた状態にされ、その上に加賀見がのし掛かってくる。

「やだ!やめろよ!」

加賀見は近くにあった、俺がベッドに投げたネクタイで俺の手首を結び、後ろから俺の腰に腕を回しベルトを抜いた。
早業で驚いた。
驚いてる場合じゃない。

「やめろって!」

加賀見は俺の言葉は聞いてくれず、スラックスとパンツを一気に膝まで下ろした。

「白いな」
「も、やだ…」

加賀見は俺のケツをやんわりと揉んだかと思うと尻たぶを左右に開いた。
泣きそうになってきた。
なんでケツ丸出しでこんなことされなきゃいけないんだ。

涙を堪えていると、後孔にチューブのようなものが入ってきた。
チューブは細かったので痛くはなかった。
この感覚知ってる…

「座薬…!?」

そうだ、座薬だ。
浣腸か!?
小便の次は大便してるとこ見せろってことか!?

たぶん赤かった顔は、きっと青ざめていることだろう。
暴れようとしたけど加賀見が体重かけてきて、動けない。

俺の想いも虚しく、中にジェルのような、クリームのような、液体と固体の中間のようなものが入ってきた。
粘膜から吸収される感覚がする。
気のせいかもしれないけど。
ああ、もうやだ。

また反転させられて、仰向けにされた。


もう次に起こることを考えたら、どうでもよくなってきて、抵抗するのもやめて、加賀見を見上げた。
加賀見はやっぱり不機嫌そうで、俺は何に怒ってんのかわからなかった。

「…お前、何でそんなに怒ってんの?」

すると加賀見の顔が近づいてきてガジガジ耳を噛まれた。

「い゛って…!ちょ、切れる!」

あま噛みの域でなく、ほんとに噛み千切られるんじゃないかと思った。

「この穴見る度、苛つくし、ほんとに噛み千切ってやろうか?」

クスクス笑いながら耳元で言われると息がかかってビクビクした。

「なんで…」
「俺以外の奴に穴なんか開けさせてんじゃねーよ」
「も、塞がっただろ」
「関係ねぇよ」

そんなこと言われても困る。
それになんでそんなことで怒んのか、わかんない。






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