龍の鬚を蟻が狙う


湯船で加賀見の脚の間に入れられた。
恋人同士がするような状態に戸惑う。
何か、いやだ。

「…なんなんだ、これは」
「狭いんだから、しょうがねーだろ」

狭いとか言ってるが加賀見んちの風呂はでかい。
というか、家自体、高価なマンションだと思う。
まあ、確かに男二人で入るには狭いが。

お湯の温度が気持ちよくてぼーっとしてしまう。
すると、睡魔に襲われた。
コクンコクン、頭が揺れる。
加賀見に話しかけられた気がしたけど、よくわからない。


何だか唇に柔らかい感触がする。
何だ…?
口の中に何かが滑り込んできて、さすがに焦る。

「んっ、ふ…?」

目を開けると霞む視界の端に赤いものが見えた。
口内をかき回される。
加賀見…?
キスされてる…?
状況を把握した俺は暴れた。

「ぐっ、ふ…はな、せっ…!」

おい、待て、こら。

「お前、何なんだよ…」

加賀見はニヤニヤ笑っているだけだった。

それにムカついた俺は身体ごと振り向き、加賀見に顔を近づける。
驚いたのか、一瞬だけ身体が後ろに向かった加賀見の顔を両手で挟む。
さらに自分の顔を傾け、加賀見の顔に近づけて、噛んでやった。
鼻を。

綺麗に鼻筋が通った高めの鼻を痛くない程度に噛んで放してやった。
加賀見は眉を寄せた、無表情よりは少し怒ったような顔で俺を見た。

「先生をからかうからだよ、ばーか」

そう言って、加賀見を見る俺の顔は、してやったり顔なのだろう。

「……」

加賀見は無言で、でも鼻は少し赤くて、それが何だかおかしくて、思わず、ふへへと変な笑い声で笑ってしまった。
加賀見は一瞬動きを止め、俺を無理矢理前に向かせ、ゴンとゲンコツをした。

「いってー…痛いだろうが!」

すると、ふっと笑い

「さっきまでは、素直でいい子だったのになあ?」
「さっきって…」

さっきまでの行為での自分の言動を思いだし、ボンッと顔が赤く染まる。
何か俺、とんでもないことを…

「アキちゃんは、乳首がなんだっけ?」

加賀見がからかうように俺に聞く。

「し、知らないっ!」

俺は恥ずかしくて茹で蛸みたいになって、湯船から出ようとすると、加賀見に腕を捕まれた。
そのまま引っ張られ、顔を寄せられ、耳に加賀見の唇が当たる。

「じゃあ、思い出させてやるよ」






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