龍の鬚を蟻が狙う

こんなに憂鬱な朝は生まれて初めてかもしれない。
昨日のことを思い出すだけで、ため息が出た。
加賀見と顔を合わせるのが気まずい。
というか、一晩明けて、恥ずかしさが増した。


「みんな席つけー」

教室を見渡すと、さっそく加賀見と目があった。
にやりと笑う加賀見。
朝から素敵な笑顔をありがとう。

さっと目をそらしてしまった。


「アキちゃんおはよー!」

井上、声でかい。
ドタドタと俺に寄ってくる。

「はいはい、おはよう」
「今日もかわいいよー!」

そう言って抱き締められた。

「うるせぇ、留年させんぞ」
「こわっ!」

みんなが笑っていた
何もおもしろくないぞ。

井上を膝で軽く蹴ると、口を尖らせて、渋々といった感じで席に帰っていった。



朝のホームルームが終わって、教室を出ると、がしっと誰かに腕を捕まれた。
振り向くと加賀見がいた。
な、なんだ?

「加賀見、チャイム鳴るぞ?」
「………」

無言で俺の腕を引っ張り、ズカズカと歩く。
加賀見が発する空気から不機嫌さが伝わった。
話しかけても応えてくれないし、力では叶わなくて、抵抗もせずに歩いた。
途中でチャイムの音が聞こえた。
生徒に逆らえないなんて、情けない教師だな、俺。


着いた先はトイレだった。

個室の中に押し込められ、加賀見も入ってきた。
男二人だと案外狭くて、近い。

「加賀見、授業…」

どん、と壁に押し付けられた。
背中痛い。

「なにすんだよ!」

すると加賀見は俺のネクタイを緩め、もともと開けていた第一ボタンにプラスしてさらにボタンを三つ外した。
俺のYシャツは計四つも外れている。

Yシャツの前を、がっ、と肩まで開かれ、はだけた。
加賀見がそこに顔を埋める。

「おいっ!やめっ…んっ、いァっ!」

ピリッとした痛みが走った。
歯まで立てられて変な声が出た。
ああ、もうほんとに恥ずかしい。
男同士なのに、加賀見に裸見られんの恥ずかしい。
こんな変な声も聞かれたくない。

「ひっ、ぁ…んぅ…いぅ…!」

濡れた唇と粘膜の感触に体が敏感になっていく気がした。
加賀見の黒みかかった赤い髪が首に触れ、くすぐったい。
その髪をくしゃりと撫でたくなって、我に返りやめた。

ちう、ちう、って音が何度もした。
トイレは静かで音が響いて恥ずかしかった。
またピリッと痛くてそれが何度か続いた。
俺は恥ずかしさに耐えられず、泣きそうになりながら、目を瞑って羞恥に耐えた。


やっと顔を離され、加賀見は顔を埋めた辺りを見て、そっと撫でると満足そうにしていた。
なんだ?








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